１４話 知らないふりを 【作哉】 ページ15
あれから何時間たったのだろう。いや、何分という間だったかも知れない。
悪いのは尊であんなこと聞くあいつが馬鹿だったんだ。私はそれほど悪くない。
枕は涙でぐっしょり濡れていて目の周りもジンジンとする。泣きすぎた。
自室から出て気持ちを切り替えようとあいつに話をと、リビングに行くと尊の姿はなかった。私のオムライスがラップされているだけで書き置きもない。
何処かに行った。
でも、なんでこんな時間に？
「考えられる線は二つ……」
一は、お母さん達の死因を探るためお世話になった公安へ行った。
二つ目は多分あり得ないけど、例の組織に捕まった。
二つ目はない。あったとしたら、私だって捕まっている。
オムライスを温め直しスプーンで口に運ぶ。味がしない。いつも二人で食べていたからか、美味しいはずの自分の料理がまずかった。
だが、まずいのは今の状況。
尊がもし、両親の死因について知ったら隠した私のことをどう思うだろうか。言ったら力になったとかそういうこと、かっこづけて言うんじゃないか。
そして、知ればあいつの性格上探るような気がする。危ない橋を渡って死んだお母さん達みたいに……
「……最悪」
冷たい水で食器を洗いながら私は下唇を噛んだ。
あいつが、あそこまで真剣な顔で言ったのだから本気なのだろう。秘密はなし。と決めたけど、それでも隠していたかった。
私は帰ってこないお母さんが買ってきてくれたパソコンを内緒で学校にも持っていっていた。でも、そのパソコンにはお母さん達が残した遺書とお母さん達が潜入していた組織について書いてあった。
勿論、それは厳重に保管しているし私しか見られない。
ただ、何故それを私に残したのか。
調べて。真実を知って欲しい。
ということではない。お母さん達は私達のこと第一に思っていてくれたから、私達を危険に巻き込むようなまねはしないだろう。
なら、何故。
そんなもの残されたら、知りたくなるに決まっている。その組織の全貌を暴いて、地獄に突き落としてやる。
馬鹿だけど、いつも私のことを気にかけてくれるお兄ちゃん。私に残されたただ一つの宝物。
あんな態度とっちゃってるけど、でも、私はそんなお兄ちゃんのことが大好き。何に変えても守りたい。
だから、たった一人の家族を、大好きなお兄ちゃんを守るためにまだ少しだけ―――
「一人で戦わせて」
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