11話 何も知らないくせに 【作哉】 ページ12
スーパーのセールに間に合い、お一人様一パックまでの激安赤卵ゲットしちゃいました。十個入りだからかなり得した。一パックで三円。
その後も、キャベツとか白菜とか、にんじんの詰め放題とかあってスーパーを出るころには両手が野菜などでふさがっていた。
卵が安くはいったから今日はオムライスにしようと思う。
家に帰り、手洗いをすませる。自分の部屋にある小さな鍵付きの引き出しを開けてお母さん達の写真を取り出す。
そして、それを立てかけ手を合わせる。
「……お母さん、お父さん。お母さん達のおかげで今、何不自由ない暮らしができてるの。でも、やっぱり悲しくなる。大人になったって言うのにね」
私はそう言ってからまた、引き出しにしまう。お兄ちゃんにこんな姿見せたくない。
てか、そもそもあいつは何も知らないわけだし。
「よし。作るか」
私は、気を取り直してキッチンへ向かいオムライスを作ることにした。チキンライスも、なかなかの味で、今日はトロふわのオムライスができた。これも、お母さんに教えてもらったんだけど。
歪む視界、溢れそうな涙をグッとこらえて皿に盛り付け、ケチャップでハートを描く。冷めないうちにあいつが帰ってくることを願った。
――――が、帰ってこない。
一人は寂しいからっていう理由で、二人そろうまで食べないのだけど。
ガチャッと玄関があくおとがして私はキッと睨み付けた。
「遅い!!」
「帰ろうとしたら天使が声かけてきたんだから仕方がない!」
「天使?ああ、ロックオンされた哀れな天使ね。」
遅かったくせに、言い訳をするあいつがむかついた。オムライスとっくに冷めてるっつぅの。
でも、また話をそらして少しまじめな顔をしてこう言った。
「親って何で死んだのか知ってる?
今日聞かれて返答に困ったんだ。」
は?
「知らない。」
尊はなおもしつこく聞いた。誰に聞かれたの?そんなこと。尊は私に考える時間さえ与えず、話を続ける。
「事故か自決か他殺かも?」
「知らないって言ってるでしょ!」
思わず、叫んだ。
すると、あいつはあんぐり口を開けたまま固まった。
「そう、悪かったよ変な事聞いて。」
でも、何にも無かったように笑顔になる。ふざけるなよ。
私は、言葉にする前に尊を突き飛ばして部屋に戻った。そして、枕に顔を埋めて泣く。
「馬鹿、馬鹿……何も知らないくせにッ!」
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