〃 ページ6
怒って当然のことなのに、あんたは落ち着いてだとか大丈夫だからとか困った顔でアタシを止めた。
殺すだなんて半分は冗談だったけれど、その表情を見て胸がざわついた。
「なんっ、で…そんな顔…」
お願いだからと震えた声で言われて、何も言えなくなる。
ぎゅうとアタシの服を握りしめる力が強くなったのを感じた。
「…ごめんなさい、また取り乱しちゃったわね」
顔を伏せたあんたを抱きしめ、背中を撫でる。
あんたは強がっているのか、大丈夫だと、ユウちゃんのせいじゃないと泣きそうな声で言う。
胸が、苦しくなった。
「…よし、よし」
ユウちゃんのせいじゃない。
…なら、彼女がこんな風に怯えて怖がっているのは、
(……帰るところに絡んできたとかいう客のせい…)
ふと、この子を見つけ引き留めた時の、怯えた表情を思い出す。
そのあとのアタシだと気付いた時の安堵した表情も、バイトでと言ったぎこちない笑みも。
(この子をこんな表情にさせるなんて、)
(こんな風に苦しませるなんて、)
「……っ」
「…………ふざけんな…」
零れた声は、久しぶりに低く聞こえた。
・
アタシはあの子が好き。
だからあの子の苦しむ顔も、泣いてる顔も、痛がってる顔も、怯えてる顔も見たくないの。
あの子に一番似合うのは笑顔だから。
花が咲くように見せるあの笑顔を、アタシが守らなきゃ。
「あの子の為だって思えば、汚れることくらい全然苦じゃないな」
男だった塊を足蹴にし、もう一人の男に目を向ける。
足が縄で縛られたうえに刃物を突き立てられたせいか、この場から逃げることも出来なかったそう。
「男二人がかりで一人の女の子に絡むだなんて」
「どういう神経してんのかしらねぇ」
履いているヒールがコンクリートの地面とぶつかり、カツカツと音を鳴らした。
「あの子にあんな苦しそうな顔をさせておいて、生きておかせるわけないでしょう?」
「またあんたらみたいなクズが傷つけたら大変だもの」
「排除できるものは、消しておかなきゃ」
「…そうよね、傷つけられてからじゃ遅いのよ」
持っているナイフから、ぽたりぽたりと血が垂れ落ちた。
「そうと分かったら、あんた一人に構っている時間はないわ」
「今この瞬間にも、あの子に何か起こってるかもしれないし」
「……ああ、人間以外にも怖いものはあるわ」
「風邪や怪我も怖いものねぇ…そういうものからも守ってあげないと」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 111人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
林檎麻(プロフ) - お久しぶりです...!!リクエスト受け取ってくれてありがとうございます..!!とっても満足しました!! (2017年11月7日 23時) (
レス) id: 5f64ee0b75 (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - ミユティさん» こちらこそありがとうございました！これからも彼に振り回されてやってください(笑 (2017年11月6日 22時) (レス) id: ccdc96260d (このIDを非表示/違反報告)
ミユティ(プロフ) - 久々の小見川くん、とても良かったです!!!!!良く考えたら小見川君のリクエストはこれで二回目ですね笑リクエストに答えて下さり本当にありがとうございます！ (2017年11月6日 21時) (レス) id: ffac928163 (このIDを非表示/違反報告)
ももか(プロフ) - 不雲綺さん» そうだったんですか、全然大丈夫です！これからも更新頑張ってくださいね (2017年11月3日 22時) (レス) id: fd489c71d0 (このIDを非表示/違反報告)
不雲綺(プロフ) - ももかさん» 申し訳ありません。この作品は今リクエストいただいてるものを書き終えたら更新を一時停止する予定でして…リクエストは受け付けておりません。説明文にリクエスト中止と表記しておらず、申し訳ありませんでした。 (2017年11月2日 18時) (レス) id: d72d593e93 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：不雲綺
| 作成日時：2017年8月29日 17時
