山吹が散る頃に【ぬらりひょんの孫】弐

山吹57 ページ17

『はぁ……

本当、しつこいったら…』




門を通り、Aは呟いた。



「アンタ、何モンだい？」



母と違い、凜とした冷たい声にピクリと肩を動かした。




『何者でもありませんよ』



振り向き、雪麗と視線を重ねた。



嘘を言っている。




そんな目が、Aの黒い眼を睨んだ。




「嘘をつきな。

アンタ、どっかの組の回しモンだろう？

だから、鯉伴をたすけたんだろう？

恩を着せて、信用させるために。」




その言葉に、Aは薄く笑った。




『…私は別に、信用されなくてもいいんですよ。

恩を着せたのは、いつか役に立つかもしれないというその時の判断です。

どうせ、私は"約束"を守る為に恩を着せる形になったとおもいますし。』




「"約束"…？」



雪麗は、その言葉に顔を歪めた。




『いずれ分かります。


では、また会う頃に…』




「ちょっ、待ちなッ」




雪麗が声を上げたときには、Aの姿はなかった。

山吹58→←山吹56

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す