兄の日記３ ページ3
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とあるロンドンの貧民街にディオとわたしは誕生したのだが、その生活は豊かとはいえず、寧ろ、地獄に等しかった。
わたしたちには金がなかった。
『金がない』という事態がどういう事を意味するのかは、馬鹿でもアホでもマヌケでも瞬間に理解できる。魚でも理解できるだろう。もっとも、知能があるならの話になるが……。
さて、それがどう意味するのか。
答はシンプル。
《死》だ。
死ぬのだ。
人はそれだけのことで簡単に死ぬ。
わたしたちの生まれた町なら尚更、金が無ければ死ぬのだ。
だからわたしたちは二人で協力した。
今日を、明日を、明後日を…生き抜くために。
ディオは賭け事で金を稼ぐ。
わたしはスリで金を稼ぐ。
子供のわたしたちができる稼ぎ方といったらこれくらいだろう。
スリは稼ぎの内に入るのか？確かに、普通に考えたらスリは稼ぎの中には入らない……どちらかと言うと"盗み"の類に属するだろう。
しかしそれは、《普通》に考えたらの話だ。
わたしたちの《普通》は《普通》とは異なる。
この町で、人道的である《普通》を論ずるなんて言語道断。『当たり前』や『至極当然』などとぬかす人間は痛い目に合う。
……まあ、痛い目に合うだけで済めばいいが。
運が悪ければ明日を迎えることなんてできないだろう。
わたしたち二人はこの目で見てきた。
ズル賢い人間こそが生き、真っ当な人間は死ぬ。
強い者こそが生き残り、弱い者は無惨に死に絶える。
まるで弱肉強食の世界。
弱い奴は、強い奴によって骨の髄まで喰い殺されるのだ。
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「俺たちは《喰う側》だ。」
兄は…ディオはいつだってわたしに言い聞かせた。
わかってる。嫌というほど理解しているのに…、なぜかディオはわたしに対して怪訝な目を向けて言うのだ。
「《俺はお前》、無論…《お前は俺》だ。」
両手を取り額を合わせるディオに倣う。
わたしと同じ色、ブルーの虹彩同士が交差した。
「A、俺たちは…」
「ディオ、わたしたちは…」
「「 二人で一つだ。 」」
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作者名：KAWAKAWA x他1人 | 作成日時：2022年7月28日 12時
