40話 縁 ページ40
翌日________
大学の門で三人の姿を見つけ駆け寄った
『おはよう!』
「おはようA」
『アルミン、貸してもらった本読んだよ!』
「早いね!昨日のうちに全部?」
『止まらなくて、だってすごく面白かったの』
「そんないい本なのか?」
『そうなの、これなんだけど
ね、見た目もステキでしょ?』
エレンは受け取るとくるくると回して眺めた
「お〜光ってる」
「すごく綺麗、海みたい」
「僕の一番のお気に入りの本なんだ」
「ん?何か端に色がついてんぞ」
『端?本当だ、今気づいた』
「小口絵って言って、古い本によくみられるんだ」
それは紙のほんの縁に描かれる絵のことで
ぴったり閉じた時には何の絵だか分からない
アルミンは本を受け取って、上手にページをずらし
色を並べるようにした
すると、
手前に砂浜、奥には青空が広がり、
その中に雲とは形を異にして、はっきり大きく
真っ白な一つの飛行船が浮かんでいる
本の小口にとは思えないほどの繊細な絵だった
さらにそれは、
本の中身を読んだ人間には一層感慨深い情景だった
思わず私たちはわっと声を上げた
「ね、素敵だろ?エレン」
「あぁ、アルミンの言ってたことも
今ならわかる」
エレンがそう言って微笑むと
アルミンは大層嬉しそうに笑った
またこの違和感も、今後聞く物語のどこかで
自分の記憶と交わるだろう、と考えた
「エレン、海には行かないの」
「、何言ってんだよもう冬になるってのに」
「今年も結局行かなかった」
「..暑いし俺はいいよ、なぁA」
『え、あぁそう、だね』
「冬に海の話するのもおかしいだろ
授業始まるぞ行こうぜ」
エレンに手を取られて教室へ向かった
その道中ぼんやりと海のことを考えた
夏に海に行こうと誘われた私、もちろんエレンも
だがエレンは私の前でふわりとした理由を述べ
面倒そうに断った
私もエレンを置いてはいけず、一緒に行かないことにした
その時、断る口調は穏やかではあったが
まるで芯には既に決心があったように見えた
思い過ごしだったらいい
子供の頃海で波に飲まれそうになったとか
そんなだったらいい
彼は一体どんな地獄を背負ってきたんだろう
それを知るのが、怖い
「お前今日手冷たいな」
『、寒いからよ』
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レイ(プロフ) - 最高です!更新頑張ってください (2019年9月30日 21時) (レス) id: c196ca2279 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナツキ | 作成日時:2019年9月16日 17時