33話 アズサ ページ33
「名前、名乗ってないよね?私はアズサ。君は?」
「えっ……?」
「名前、あるでしょ?」
ニコニコと笑う少女に思わず戸惑う。私の答えを待っているようにされると答えるしかないと判断してしまう。本当に名前を教えていいのかと迷いながらもぼそりと自分の名前を名乗った。
「A……です」
「そう、Aっていうんだ。覚えておくよ」
「……そんなことより、早くあの人のポケモンを返してあげてください!」
私がそういえばアズサさんはくすっと笑うと「どうだろうねぇ」とふざけた様子を見せる。それからポチエナを見ると「Aのポチエナは随分と目つきが悪いんだね」と言った。
夜の海から聞こえてくる音が聞こえる。砂に足をつきながら静かにアズサさんを見た。
「うーん……いまいち燃えないね」
「……燃えない?」
「そう。こういうのって追ってくるトレーナーはすごい実力じゃない? けど、Aは見たところ新人ってオーラがプンプンだよ。だから燃えない。……詰まんないな」
ため息交じりにそう言い捨てたアズサさんの頭にバタフリーが乗る。リボンのように頭を飾るバタフリーを撫でながら彼女は「でも」と言葉を続けた。
「新人ってことはまだ成長の余地がある。その可能性にかけて、今回は見逃してあげようかな」
「何を……」
「ほら、これ。その人に返してあげたら?」
アズサさんは背負っていたリュックからボールを1つ取り出してそのまま私に投げる。慌ててキャッチするとそのボールの中にはジグザグマが入っていた。このポケモンが盗まれたポケモンだろうか。
あっさり返してくれたこともあり信じ切れない。アズサさんを疑うようにじっと見つめるとアズサさんはニコニコと笑顔を崩さずにいた。
「疑ってるね。大丈夫、その子は正真正銘女性のポケモンだよ」
「……アズサさんはどうしてポケモンを盗んだりなんかしたんですか?」
私の言葉を聞くとアズサさんは声を出して笑い始める。びっくりして硬直する私に対してアズサさんは笑いながら強く肩を叩いた。肩に走る痛みが余計に彼女を警戒させる種となる。
「固いねー。さん付けも敬語もいらないよ。ほら呼んでごらん、アズサって」
「ふ、ふざけないでください!」
無邪気な笑顔を浮かべながら私の反応を楽しんでいるような彼女に少なからず心は疑問を抱く。どうして自分が犯人だということを知られたのにこんなに余裕があるのか、私には分からない。
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miku(プロフ) - 橘 七美さん» これからどうなるかはまだわかりませんよ!w (2015年1月28日 21時) (レス) id: 38fa76f22b (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - yukiさん» 有難うございます! 現在明らかになっているのは、シオン君とアズサちゃん、それにリーダーという人物ですね。 デフォルトネームは「ナツミ」にしようかと思っています。まだ決定、というわけではないのですが; 更新頑張ります! (2015年1月28日 21時) (レス) id: 38fa76f22b (このIDを非表示/違反報告)
橘 七美 - シオン君、夢主ちゃんとフラグかと思えばアズサちゃんっ子だった…!! (2015年1月27日 12時) (レス) id: 175a080632 (このIDを非表示/違反報告)
yuki - mikuさん» ファイア格好いいです! やっぱ、シオンさんとアズサさん関わりありましたか。 そう言えば、この夢主ちゃんの名前決まってるんですか? 更新頑張って下さい! (2015年1月27日 0時) (レス) id: 38fbdd3e2e (このIDを非表示/違反報告)
miku(プロフ) - yukiさん» お久しぶりです! 有難うございます! 1番はファイアですか!w オリキャラを好きだと言っていただけるとすごく嬉しいです! 有難うございます! (2015年1月26日 20時) (レス) id: 38fa76f22b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:miku | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/katudoutyu12/
作成日時:2014年11月22日 16時