【HQ】私、可哀想【牛島若利】

9話 ページ9

*牛島side




決勝の相手は青葉城西。
いつも通りだった。
全国に行くのもきっと俺たち。

個人ストレッチを済ませた後、ふと視線を上に向けて彼女を探す。
手洗いにでも行ってるのだろうか、彼女の姿がない。


「若利くん、誰探してんのー！？」

「Aだ」

「チアのだよね？」

「ああ」


なるほど〜、とあまり興味が無さそうに呟く天童。
天童も上を見て呟く。


「いねぇや」

「だろう」


手首や足首を回して、アキレス腱をのばして、嫌という程ストレッチをする。
チアの集合、という声が聞こえてくる。

その声は本来Aのもののはずだが、今回は違う。


「マジでAさんいないじゃない？」

「……そうか」


ボールを使って体を軽く温める。
Aの姿を見ないまま試合は始まる。

Aがいないから不調だ、なんてことはなくいつも通りの動き。
Aの声がないからと言って俺たちの実力には関係ない。

胸に引っかかるものがあったとしても、何も変わらない。
3セット目の相手側のタイムアウト中。

ふと聞こえてきたチアの話し声。


「Aさん、大丈夫かな？」

「事故なんて、A先輩らしくないよね」

「そこ、心配なのはわかるけど私語は謹んで」

「すみませんっ」


Aについて考える時間もくれないまま、時間は進む。
タイムアウトが終わり、試合が続く。

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