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6th story ページ10

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目に入ってくるのは、見慣れた白い天井。
また、夢を見た。
何度も、同じ夢を見た。
見るたびに、苦しくて、起きると涙を流していた。
起きた後は、いつもしばらく起き上がれずに、ベットの上で体をまるめていた。

『はぁ…もう、零があんなこと言うから…』

そうだ、元凶は零だ。
赤井秀一が生きてるなんて、生きているわけない。
なのに、零の言葉がずっと頭の中に残っていて。
車の中で零にあの話を聞いてから、悪夢を見る回数が多くなった。
忘れたかったのに、忘れられない。
私は、一生こんなことを思って生きるのだろうか。
スコッチを取り戻すことも、赤井秀一を恨むことも、私には出来ない。
恨んだって、意味がないんだ。
もう、私だってたくさん憎んで、恨んできた。
時が経ってしまえば、スコッチを想うことも、赤井秀一を恨むことも疲れてしまった。

一体あとどれほど苦しめば、抜け出せるのだろう。




…お願い、零だけは、いなくならないで。



『れ、い… いなくならないでよ… お願いだから… 神様… 零だけは… まだ… 連れて行かないで… 零がいなくなっちゃったら… 私… もう… どうすれば… 』


言えば言うほど、涙がポロポロと頬を伝う。
ただ、誰かがいなくなるのが、寂しくて、辛くて。
みんな、いなくなってしまったら…
私だけ置いて行かないで…
お願いだから…
私だって、終わりたい。
なのに、終わらないんだ。
死にたくても、死ねなかった。
死のうと思えば、スコッチの顔が頭の中に浮かぶ。
スコッチがまるで、私に「生きて欲しい」と言っているようで、死ねなかった。

『なんでなの… なんで、いつもこうなるの… いつも置いてがれるのは私… 零は、まだ行かないで… お願い、もう少しだけ… 一人で生きていくには… この世界は、広すぎるよ… 』

一度崩壊してしまった涙腺は、私の目尻を乾かす時間もくれなかった。
ただ、ただ、泣いて。
夢を見た日はいつも、こんな感じだ。
零に気づかれないように、隠れて泣いた。
零に見つかったら、何か言われそうで、怖くて。


.


どのくらい時間が経ったのだろう。
誰も起こしに来なかったというのは、零は仕事に出かけているのだろうか。
もしかしたら、幸運だったのかもしれない。
泣きながら寝落ちしてしまったようだし、見られてない方が逆にすごい。




その時私はまだ、警戒心が薄かったのかもしれない。









…泣いている姿を、零が覗いてたなんて、気づかなかったのだから。

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作者名:紅月 | 作成日時:2018年3月6日 18時

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