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2nd past ページ9

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『あれ、バーボン…?スコッチは?』

花束を抱えて部屋に入ると、いつもと様子が違うバーボンがいた。
どうしたんだろう。
そういえば、ライもいない。
約束、なくなったのだろうか。

『ねぇ、どうしたの?』

たまらず聞けば、バーボンはきっと私が今まで聞いてきたバーボンの声の中で、一番低くか細い声で答えた。


…スコッチが殺されたと。

一瞬思考が回らず、花を落としてしまう。
どういう意味だろう。
なんども、なんども、そう考えた。
任務中の事故死だろうか。
でもバーボンは殺されたと言っている。
一体誰に、なんのために?

『…どういう意味。』

震える声を抑えようとしても、震えてしまう。
殺された、という事実の意味はわからないままなのに、私にもわかることが一つだけ。

それは、もう、スコッチに会えないこと。
スコッチの笑顔を見ることさえも、叶わないこと。

「NOC、NOC(公安の犬)だったんだ。…それで、ライに殺された。」

『え、NOC(スパイ)だったの?スコッチは?』

バーボンが黙って頷く。
この時私は、かなり焦っていた。
バーボンがいつもと違って敬語じゃないことにも、気づけないぐらいに。

『じゃあライは、NOC(裏切り者)を始末したってこと…?』

「あぁ…いや、えぇ。そうみたいです。全く、スコッチには騙されてしまいましたね。」

そう笑うバーボンの顔は酷く悲しそうで。
だけど私は、なにも言えなかった。
苦しくて、辛くて、何か言おうとすれば、涙が出てきそうで。
なんでなの、なんでなの、なんで、スコッチが殺されないとだめなの…
NOC(裏切り者)が殺される場面を、今まで散々見てきたのに。
どうして、こんなにも悲しいのだろう。

『ライ、は…ライは、今どこに…?』

「さぁ、知らないですよ。」

バーボンからは怒りを感じた。
組織の一員としては、NOC(スパイ)は敵な筈なのに。
何故か、バーボンは怒っていた。
でも、私も同じだった。
バーボンと同じ、怒っていた。
ライが、あの笑顔を奪っていったのが、ただただ悔しくて、辛くて。

ふと、床を見ると、花が散らばっていた。
ぐちゃぐちゃになってしまった花は、まるで私の心を表しているようだった。
思わず、その花を自分の足で踏む。
こんなの、ぐちゃぐちゃになってしまえ。
こんな感情、要らない。
そもそも、私がスコッチを、ライを、信じたのが間違っていたんだ。


組織の人間は、あんなに笑わない。


なんで、気づかなかったのだろう。

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作者名:紅月 | 作成日時:2018年3月6日 18時

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