5th story ページ7
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零の支度が終わるのを待ってから、零の車にゆっくり乗り込む。
送って行くって、一体どうしたんだろう?
同じ家に住んでいるんだから、話とかは家でも大丈夫だろう。
そもそも、私、送られるほど子供じゃないし。
『零?どうしたの、いきなり。』
「あぁ、本当は家でも良かったんだが、どうしてもAの姿みたら早く言いたくなってな。
…赤井秀一が生きているかもしれない。」
『は?』
赤井秀一ってあの赤井秀一のこと?
でも、キールに殺されたはずだ。
その映像を実際私も見たんだ。
何を今更…
『…殺されたんじゃないの?
「あぁ。そうなんだが、そもそも俺は、あの男があんな簡単に殺されるはずがない、と思うんだ。生前触ったと思われる携帯に右手の指紋が付いているのも気になる。」
『それは、私だって気になるよ。彼は
そう、彼は左利き。
なのに、右手の指紋ってどう考えても怪しいんだ。
でも、私は見たんだ。
赤井秀一が来葉峠で撃たれるところを。
ジンに、見せられた。
映像を、無理矢理。
だから、信じるしかなかったのに。
今更、遅いよ、零。
赤井秀一が生きていても、スコッチは死んだんだ。
その事実は、変わらない。
変わるはずがない。
「…A、お前はどう思うか?」
零が車を走らせながら、そう聞いた。
どうって、わからないよ。
複雑だ。
無数の糸が絡んで、絡み合って、私もどうしていいかわからない。
もし、赤井秀一が生きていたら。
スコッチの仇を打てる?
でも打ってどうするの?
スコッチは帰ってこない。
『…わからない。』
「だよ、な。俺も同じだ。アイツが生きていても、なんの意味もない。死んだ人は、生き返らないんだ。」
生き返らない。
その言葉が、私の頭の中をぐるぐると目まぐるしく回る。
赤井秀一を捕まえたって、事実は事実。
スコッチが死んだのは事実。
スコッチは殺されたのは事実。
もう、嫌なんだ。
赤井秀一なんてどうでもいいよ。
みんな死んでいく。
私のそばを離れていく。
あの太陽のような、明るい笑顔も見れない。
『零は、スコッチが、本当に赤井秀一に殺されたと思う?』
「はぁ?いきなり何言ってるんだ。スコッチは、
最後の方は叫んでいた、零は。
弱々しい声で、悲しい声で。
『うん…私も、そう思う、よ。』
私の声も、ひどく掠れた声だった。
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作者名:紅月 | 作成日時:2018年3月6日 18時