小さなヒーロー ab×sk

ライブ後　dtnb ページ20

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「終わった…」

終わってしまった。

デビュー出来るかも分からないまま
長々とJr.として頑張ってきて

正直、キツくて、辛くて、
嫌な事も沢山言われて

でも、この仲間たちだから
ファンが居たから
もう少し…って頑張って来れた。

ライブは成功した。

正直、途中で意識は飛びそうになるし
足や腕は痛いし
喉だって引きちぎれそうだった。

多分、メンバーだって同じだったはず。

でも、途中で止まる訳にはいかなかった。

デビュー出来るかも分からないままの俺らを
ずっと支え続けてくれた
ファンや周りの人達のため

そして、
あれだけキツイ状態の中
歩みを止めず歩き続けてきた
過去の自分達の為にも

絶対パフォーマンスを止める訳にはいかなかった。

「翔太。頑張ったね。」

後ろから聴き慣れた声がして
振り向く。

「あー…これじゃぁ、ラウールと康二が近寄らない筈だ。」

なんて笑いながら近づいてくる幼馴染み。

「涼太。うるさい。」

いつもはこんな言い方しない。

「なんで、俺達。こんなに頑張って来たのにこんな事になったんだよ！1番支えてくれたファンの顔も見えない。お世話になった人達も呼べない。やっと恩返し出来るはずだったのに…」

「翔太。俺達、たくさん頑張って来たね。辛い事もたくさんあったね。翔太の気持ちはよく分かる。だって、誰よりも一緒に居るんだもん。当たり前でしょ？」

あ…そうか。
悔しいのも、悲しいのも
俺だけじゃなくて

涼太もなんだ。
いや、メンバー全員か
それに、きっとファンのみんなも…

「だからこそ、次は笑顔でいっぱいのライブにしてあげよう？」

涼太の言葉がストンッと心に落ちてくる。

そうだ。終わった事は振り向かない。
大切な思い出は
山を登りきって振り返ればいい。
今の俺達が見るのは
ただ、前だけ。

「涼太。さっきはごめん。ありがと。」

「フフ笑。やっと戻って来てくれたね。ラウールと康二が「翔太くんが怖い顔してる」って怯えてたよ？」

え？俺、そんな顔してた？

なんだよ、言えよ笑

「翔太。ライブで俺らの為に口に出して言ってくれてありがとう。変な風にとられるかもしれない言葉だったけど…俺達やファンのみんなには翔太の気持ちは伝わったと思うよ？」


な…なんだよ。
照れるじゃん！！！

「バーカ…」

つい、天邪鬼なおれは
そんな言葉しか言えないけど

涼太は嬉しそうに笑ってるから
俺の言いたいこと
幼馴染みには通じたみたい。

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