【追憶】 ページ16
画像フォルダの中だけじゃない、僕が記憶しているAちゃんはいつも同じ顔をしていた。
まるで泣きそうな、けれど口角をきゅっとあげて、目じりを下げる。
そんな溢れかえりそうな感情を推しとどめるみたいな。
歩き疲れた足をぶら下げて、バスに揺られる途中。
携帯を覗き込んできた彼女はアナウンスを聞き、嬉しそうに窓の外を指さした。
「あっ見えてきた！すっごくきれい、」
「うわぁ」
早送りの様に過ぎた二日目は既に午後四時を回り、西の空には沈みかけた夕日が見える。
暁に包まれたそこには一面の向日葵畑が広がっていて、ほんの少しだけ早い夏を告げているようだった。バスの通る人気のない道路を進めば、僕らの胸辺りまで背丈のある花の中に入っていく。
四方八方どちらを向いても、太陽を模したようなそれがしっかりとした根を張り、真っ直ぐこちらを見つめていた。
「あのさ、デクくん。」
はしゃいでいた筈の彼女はふとこちらを振り返り、黒曜石の瞳をきらめかせる。
頭上にはまだ青空がほんのりと残り、浮かぶはオレンジ色に染まった雲。
逆光で彼女の表情は良く見えなかった。
ただ、想像はつく。
長い睫が鮮明な影を落とし、何とも形容できないような顔をして、僕に何かを告白しようとしているような。きっとそんなだ。
暖かい風が吹き上げる花びらとか、耳元で長い髪を抑えるその仕草だとかが、ぎゅっと胸の奥深くを締め付けるの分かった。
「覚えてないかな。この景色。」
両手で長方形を作って、景色を切り取る。
「美術館も、鳥居も。全部見たことあるんだ。私の実家がこの辺でね、良かったらデク君も一緒にどう？って私の親が声を掛けたの。」
すっと目を細めて、懐かしむように、一音一音を発する。
その丁寧な動作に見とれながらも、僕はそんな記憶に心当たりはないのだと言い出せずにいた。
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23.4度(プロフ) - ましろんぬさん» 他も見てくださったんですか....泣ありがとうございます！ご感想本当に励みになります！ (2017年10月12日 19時) (
レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - ぼうﾆﾝさん» 遅くなり申し訳ないです！こちらでもコメントありがとうございます...!!ご感想頂き本当に嬉しいです。ついったーの方でもよろしくおねがいします！ (2017年10月12日 19時) (レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
ましろんぬ(プロフ) - 素敵なお話ですね。他の作品も好きです。更新頑張ってください。 (2017年10月9日 0時) (レス) id: 1785f6c6df (このIDを非表示/違反報告)
ぼうﾆﾝ(プロフ) - キャラの矢印の方向やストーリーがどすとらいくすぎて感動しました泣 これからも応援しています!! Twitterでイラスト拝見させていただきましたが､小説もクオリティ高くて尊敬しちゃいます~!! (2017年10月5日 21時) (レス) id: 64374fa942 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - お気に入りありがとうございます！更新滞り気味で申し訳ないです...。この後もお付き合いいただければと思います！ (2017年9月30日 17時) (レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：23.4度 | 作者ホームページ：http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時：2017年9月7日 20時
