【追憶】 ページ15
私はろくな人生を送ってこなかった。
ヒーローの登場によって弱体化した組織は幾度にも及ぶ摘発、分裂を繰り返し、もはや原形をとどめないほどになっている。
悪事に手を染めていた両親に道具と利用されたのは、私の個性があまりにも万能であり、警察の目を欺くことに特化した物であったからだ。それまでまるで興味を示さなかった両親は、個性が発現した途端、気色が悪いほどに私を重宝し始めた。
愛されたい。
幼子なら誰でも持ち得るそんな基本的な欲求を満たすため、善悪の判断など付かないうちから、血にまみれたそれを消し去っていた。
繰り返される隠滅。
これはわるいことで、デクくんたちに知られたら嫌われちゃう。
そんなことわかってた。
ランドセルを背負って3人で帰ったある日の帰り道。
道端で流れるニュースを聞いてデクくんは得意げな顔でこういった。
「こんな悪いことをする奴は、きっとオールマイトがばしってやっつけてくれるよ！」
『またも死体が完全に消滅。同一犯か。』
そんなテロップを前に絶望した時、私たちはまだ二桁も生きていなかった。
正義を見せつけ罪悪感を与え続けるデクくんは、同時に唯一の希望でもあり、かろうじて私を表社会につなぎとめる要素だ。
彼が居たからこその11年間だった。
・
・
・
開いたガイドブックには、何枚ものカラフルな付箋が貼り付けてある。
「ねぇ、どこいこっか。」
色とりどりのステンド硝子に囲まれた螺旋階段を上る、美術館。
海を背景にそびえ立つ、朱色の鳥居。
児童文学を元にした、バラ園と洋館。
煌めく世界の中。
シャッターを押せば、画面の中の彼女はいつも笑っている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 146人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
23.4度(プロフ) - ましろんぬさん» 他も見てくださったんですか....泣ありがとうございます！ご感想本当に励みになります！ (2017年10月12日 19時) (
レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - ぼうﾆﾝさん» 遅くなり申し訳ないです！こちらでもコメントありがとうございます...!!ご感想頂き本当に嬉しいです。ついったーの方でもよろしくおねがいします！ (2017年10月12日 19時) (レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
ましろんぬ(プロフ) - 素敵なお話ですね。他の作品も好きです。更新頑張ってください。 (2017年10月9日 0時) (レス) id: 1785f6c6df (このIDを非表示/違反報告)
ぼうﾆﾝ(プロフ) - キャラの矢印の方向やストーリーがどすとらいくすぎて感動しました泣 これからも応援しています!! Twitterでイラスト拝見させていただきましたが､小説もクオリティ高くて尊敬しちゃいます~!! (2017年10月5日 21時) (レス) id: 64374fa942 (このIDを非表示/違反報告)
23.4度(プロフ) - お気に入りありがとうございます！更新滞り気味で申し訳ないです...。この後もお付き合いいただければと思います！ (2017年9月30日 17時) (レス) id: 8c7360ac03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：23.4度 | 作者ホームページ：http://nanos.jp/aoikasou/
作成日時：2017年9月7日 20時
