【金カム夢】雪に拐かされ… (ページ10)

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開幕の狼煙ページ10

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『刺青囚人…ですか？』

鶴見「そう…そろそろ君にも私の目的を話しておこうと思ってね。」

鶴見中尉にお茶に誘われ、私はもぐもぐとみたらし団子を頬張りながら鶴見中尉の話を聞いていた。

簡単にまとめると、アイヌが集めた金塊をある男が盗み隠したのだとか…その男は今網走監獄にいて監獄外の仲間に金塊の場所を知らせる為に囚人に刺青を彫り脱走させた。

そして、鶴見中尉はその金塊を手に入れてロシアの一部を買い取り日本の領土にするのだとか…

壮大過ぎる野望とも言えるその思想に私はたじろんだ。

鶴見「刺青囚人を集める事に是非とも君に協力して欲しいのだよ。」

『…了解致しました。
恩人の鶴見中尉殿のお願い事でしたら是非とも私に協力させて下さい。』

鶴見「うん、ありがとう。実に心強い。」

恩人からの提案を断る事等出来るはずもない。
それを逆手にほぼ強制的に協力に持ち込む…この人の考えてる事は全部理解出来ないし、理解してしまえば何かが終わる気さえした。

二人してにこやかにとんとん拍子で進んだ話だっだが…私は内心、心臓を鷲掴みにされている気分だった。

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『尾形上等兵殿、此方の方角から人の声が…人影も二人、いえ三人あります。』

尾形「相変わらずの耳と目の良さだな……本当に三人いる。一人は刺青囚人で間違いなさそうだ。」

辺りを見回していた私が指差す方角に尾形上等兵が双眼鏡を覗き「ほぅ…」と声を漏らし私の頭をポンっと撫で、褒められた事に思わず口角が上がった。

幸か不幸か奴隷生活の中で私は五感の一部が研ぎ澄まされていた。

３０m先なら細部まで視認出来、３００m先も双眼鏡がなくても裸眼で確認出来る程の『目』
１００mまでなら音を聴き分ける事が出来、それ以上の距離は判別までは出来なくとも聞き取る事が出来る『耳』

私は優れた耳と目を有してしまった。

それらをこの場で役立てる事に鶴見中尉が仕向けたとも思うと背中がゾクリと冷えた。

『…アレが刺青囚人ですか』

尾形「見えるか？」

『…この距離ですとギリギリですね。黒い、刺青…曲線？変わった模様ですね。』

尾形「見えるんじゃねぇか。」

『ふはは、冗談です。鶴見中尉殿から特徴は聞いてましたから』

尾形上等兵からのツッコミに思わず笑ってしまい顔を逸らした。

『それで、どうしますか？』

尾形「囚人は捕獲だ。今回藤見は補佐に回れ。」

『了解致しました。』

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