【金カム夢】雪に拐かされ… (ページ39)

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家永side

土方さんのお孫さんのAさん…線が細くて可憐で、とても可愛らしくいい子そうだと言う印象だった。

でも…

『…私も人を食べた事があるからです。』

その一言に私は舞い上がった。
「もしかしたらこの子なら私を理解してくれるのでは？」と、思ったから…でも、この子が人を食べる理由と私が人を食べる理由は全くの別物だった。

後悔と苦悩…その色を瞳に宿しながら語る彼女を見て、「ああ、その悩みごと私が食べてあげるのに…」と思ってしまった。

牛山「ああ、そうだ。嬢ちゃんの話にすっかり聞きいっちまって忘れてたぜ。永倉のジイさんが俺と嬢ちゃんとで尾形を探して来いとさ。」

『尾形さんを？了解致しました。』

牛山「…おや？」
家永「あらぁ？」

私と牛山様はほぼ同時にそう声に出していた。
牛山様と視線を合わせる。どうやら牛山様も同じ事を考えているようだった。
当の本人は何の事だか分からないようで首を傾げている。

『あの…何か？』

家永「つい最近まで“尾形上等兵殿”とお呼びしてませんでしたか？」

牛山「いつの間にかさん付けに変わってるな。」

『…えっと…尾形さんが脱走兵なのに階級に固執しているように見えるから、と…』

慌てたように弁明する姿にクスッと笑みが浮かんだ。
存外、あの猫とこの子は相性が良いのかも知れない。

ーーーーー

牛山様とAさんが隠れ家から出て少ししてから、ご飯の準備に部屋を出ようと襖を引くとそこには土方さんがいた。

家永「わっ！？びっくりした。いつからいらして…」

顔が暗い事に気が付いた。Aさんのあの話を聞いていたのだと分かった。

家永「立ち聞きとは行儀が悪いのでは？ましてや孫娘の話を…」

土方「家永、私はその話を聞いていない。そう言う事にしておけ。」

そう言うと足早に去ってしまった。

家永「はぁ…まあその方が良いかも知れませんね。」

土方さんの言う通り、Aさんは土方さんには知られたくないかも知れないから…

ふと、網走監獄にいた時に「君菊」と言う単語を聞いた気がした。

家永「何だったかしら…確か…」

君菊、土方…その単語を口にする老人を思い出した。

「私は土方歳三から君菊を助けたんだ」

「私の君菊…可愛い可愛い君菊…あの子の初めて(・・・)は私が頂いたんだ」

下卑た笑みを浮かべる老人の声が頭に蘇った。

家永「まさか…！」

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