【金カム夢】雪に拐かされ… (ページ37)

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夕張ページ37

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夕張での刺青の噂を聞きつけ私達は確認をする為に足を運んでいた。

尾形「…藤見」

『はい、如何致しましたか。尾形上等兵殿』

夕張の隠れ家で荷物を整えていると唐突に尾形上等兵に声を掛けられて私は首を傾げた。

尾形「その尾形上等兵殿はもう止めろ。脱走兵がいつまでも階級に固執してると思われるのも癪だ。」

尾形上等兵はそう言いながらハラリと落ちる前髪を直しながら言った。

『…では、どのようにお呼びすれば宜しいでしょうか』

尾形「…尾形で良い。」

私の問いに少し考えるように間を置いて尾形上等兵がそう言った。

『尾形殿？』

尾形「堅苦しいな。もっと崩した呼び方で良い。」

『えっと…尾形様？』

尾形「まだ堅苦しいな。」

『……尾形さん？』

尾形「…それで良いだろ」

何度か言い直させられ、「まだ納得はしてないがこんなもんか」と言うような顔で頷いた尾形さんは少し満足そうに笑って私の頭を撫でた。

ーーーーー

荷物等の整頓をしていて少し尾形さんと別行動しただけなのにいつの間にかいなくなっていた。

家永「あらあら、寂しいのですか？」

一人寂しく火鉢に当たっていると家永殿がニコニコしながら話しかけて来た。

『…分かりません。この気持ちが寂しいのか…今の私は忘れた感情を少しずつ取り戻している段階なので…』

家永「忘れた感情を？…ロシア兵のせいですか？」

家永殿の言葉に自分の胸に手を当てながら答えると家永殿の表情が真面目な顔に変わった。

『感情を殺さなければ今の私はいません。ずっとそうして生きて来ました。
第七師団に拾われて、感謝と喜び、怒りを思い出させて頂きました。あと……恐怖心も…』

笑えと言われれば笑う。泣けと言われれば泣く。殺せと言われれば殺す。
それが私達奴隷の生きる術だった。

家永「…尾形さんから聞いたのですが、寝ている間に移動されると警戒心が高いそうですね。
理由を聞いても？」

『理由は……分かりません。
ただ、移動先が布団だと分かった瞬間全身から血の気が引いて奥底から恐怖が沸き起こるんです。何に怯えてるのか自分でも分かりませんが、物凄く…怖かったんです。何をされるか…何が起こるか……凄く…』

家永殿の質問に淡々と答えながら私は自分の腕を抱きすくめた。そんな私の様子を家永殿は真剣に見詰め、聞いてくれた。

『…私からも家永殿に質問しても良いですか？』

家永「ええ、何でもどうぞ」

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