【金カム夢】雪に拐かされ… (ページ21)

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心的外傷ページ21

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『二階堂一等卒殿！彼を見張る様にと鶴見中尉殿から命を受けているのは私です！お引き取り下さい！』

部屋に入り、扉を閉める二階堂一等卒方に声を張るも「うるさい」と言いた気な顔で睨まれ聞いてくれる素振りはない。

「うるさいな。…お前はそこでじっとしてろОдИН(アジン)。」

『ｯｯ…！？』

低い声で、耳元で、呼ばれたその名(・・・・・・・)にビクッと身体が強張るのが分かった。

ロシア兵に奴隷の時に呼ばれていたその名に……チカチカッと頭の中に兄が殺される場面、両親が死ぬ場面が映し出され、私はその場に膝を付いた。

『お父さま…お母さま…お兄さま…ごめんなさい。ごめんなさいｯ
извини(ごめんなさい)…прекрати это(やめて下さい)…я не буду бунтовать(反抗しませんから)……ｯ』

恐怖で身体が震える。
今はいないはずのあの男が目の前にいる様な気がして震えが止まらない。

私の身体に、心に刻まれた恐怖は消えて無かった。

呼吸がし辛い…

涙で視界が滲む…

怖い…

苦しい…

誰か……助けてｯ

床に蹲り、震える私を誰かが抱き上げた。

鶴見「藤見、大丈夫か？」

『鶴見、中尉殿…』

一瞬、鶴見中尉が父の顔とダブった気がした。
だけど、すぐさま私は正気を取り戻すと血の気が引く思いで慌てて鶴見中尉の前で床に頭を付けて土下座した。

『も、申し訳ありませんでした！鶴見中尉殿からの命も遂行出来ず、自らの心の弱さに打ち勝てず私は…ｯ』

鶴見中尉の手がポンっと優しく肩に触れ、思わずビクッと身体が震えた。

鶴見「もう良い。誰か藤見を医務室に連れて行ってくれ。
その際、杉元の治療に医者を呼ぶのを忘れるなよ。」

「はっ！」

『ぁ…でも、…』

鶴見「今日はもう休め。」

困惑する私に鶴見中尉はそう言うと兵士の一人に私を預けて次の指示を出していた。

鶴見「あの兄弟を杉元に近づけるな。」

「はいっ！」

ーーーーー

医務室のベッドで私は丸くなっていた。

『…きっと失望された……捨てられるかも知れない…強くならないと……身体も心も強く…ｯ…
……尾形上等兵殿…どうしたら良いですか？」

無性に虚しく、寂しさを感じ頭の中に真っ先に浮かんだのは尾形上等兵だった。

この世は怖い。この世は苦しい。この世は……孤独だ。

私はいつの間にか眠っていた。

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