【金カム夢】雪に拐かされ… (ページ3)

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語りページ3

死にたくないなら敵を殺せ
褒められたいなら敵を殺せ
食事が欲しければ敵を殺せ
慰み者になりたくなければ敵を殺せ
仕置きが嫌なら敵を殺せ

私達には選択肢なんてなかった。

ただただ、言われた事を遂行するしかなかった。

そうしているうちに奴隷の子供達は命令を下すロシアの軍人に僅かながら崇高さを感じていたと思う。

『私達にとってロシア兵の上官殿は逆らうなんて烏滸(おこ)がましい程崇高な方だと…自分に言い聞かせていたんだと思います。』

後にいうところの“ストックホルム症候”に陥っていたのである。

『上官殿は正しい、上官殿は正義、上官殿が全て…だと
完全に我を失った私達はそのロシア兵の言いなりでした。人を殺して褒められ、人を殺して与えられ、人を殺して……私達はただの犬のようでした。
きっと気にかけてくれてたロシア兵の人達からも奇異な目で見られていたと思います。』

ご主人様に褒められて喜ぶ犬に私達はなっていた。

日露戦争のあの時までは……

鶴見「……そんな洗脳状態でよく正気に戻れたものだね。
何かキッカケでもあったのかな？」

『…はい。日露戦争の最中、毎日のように銃声や哮り声が聞こえる中で聞こえたんです。
“ふじみ”と…』

鶴見「不死身…？」

私の言葉に鶴見中尉の目が細められた。

『はい。その時、思い出したんです。自分の名前を…
藤の花を見ると書いて“藤見(ふじみ)”…
私の名前、藤見Aを』

その時の現状を思い返して私は思わず口元が緩んだ。

ロシアの軍人は奴隷の子供達を番号で呼んでいた。

長年それが続いて、私達は自分の名さえ忘れていた。

…親がくれた大事な名を……

そんな時、戦場の何処からか聞こえたあの声…

「俺は不死身だぁ!!!!」

その声に私は自分の名前を思い出したんだ。

『呼ばれた気がした…たまたまかも知れない…空耳かも知れない…でも、私の耳には確かに“ふじみ”の言葉が聞こえたんです。』

私の目からぽろぽろと涙が落ちた。

『頭の中がスッキリして行くのが分かった。
靄(もや)が晴れて行くのが分かった。
何をするべきか…どうするべきか…』

私はその瞬間に戦場で奴隷の仲間を探した。

そして、一人一人に声を掛けた。

あの男……

ロシア兵に報復する為に…

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