【金カム夢】雪に拐かされ… (ページ17)

今日:3 hit、昨日:22 hit、合計:21,413 hit

不死身の男ページ17

.

この場から離れたそうな姿勢に私は腰の銃剣の柄に触れる。

鶴見「尾形上等兵をやったのはお前だな？
不死身の杉元」

『ｯ……不死身の杉元…』

鶴見中尉の言葉に頭の中にチカチカっと尾形上等兵と目の前の男、不死身の杉元が交戦している場面が映し出された。

ああ…そうだ。この男だ。
でも…そうなら………彼は＿＿＿＿だ。

外套の中で私の手は銃剣の柄から離れた。

二階堂「座れ。」

立ち上がっている不死身の杉元に二階堂一等卒達が銃先を向ける。

杉元「お前等そっくりだな？銃で俺を殴ったのはどっちだ？
印をつけとけよ。おデコとかに」

二階堂「…殺してやる」

杉元「人違いだな。俺は杉元なんて名前じゃねぇ」

二階堂一等卒達に嫌味を言い、団子を頬張る鶴見中尉の前にドカッと座り直した不死身の杉元は自分が「不死身の杉元」では無いと否定した。

鶴見「一度だけ、“不死身の杉元”を旅順で見かけた。少し遠かったが…
鬼神のごとき壮烈な戦いぶりに目を奪われた。
あの時見たのはお前だ。そば屋の前での大立ち回りを見てピンときた。」

杉元「俺は第二師団だ。旅順には行ってない。やはり人違いだったみたいだな。」

完全に鶴見中尉は不死身の杉元だと確信しているが、当の本人は頑なに否定する。

鶴見「何故、尾形上等兵は不死身の杉元に接触したのか……それはお前が金塊のありかを示した刺青の暗号を持っていたからだ。
…と、ここまで話が繋がる事を恐れて我々から逃げようとした。
刺青人皮を持っているのだろう?
何処に隠した?」

杉元「金塊？刺青？何を言ってるのかさっぱりだが、俺の荷物はもう調べただろう？ケツの穴まで調べて構わんぞ。
お前等の大将はアタマ大丈夫なのか？」

鶴見「脳が少し砲弾で吹き飛んでおる」

二階堂「ぷっ」

杉元「ははははは」

和やかな雰囲気で笑うこの人達を見て私はごくっと息を呑んだ。

ザクッ

一変して緊張感が走る。
鶴見中尉が食べ終えた団子の串を不死身の杉元の頬に突き刺した。

鶴見「…たいした男だ。瞬き一つしておらん。
やはりお前は不死身の杉元だ。
たがな、お前が如何に不死身で寿命のロウソクの火が消せぬというなら、俺がロウソクを頭からぼりぼり齧って消してやる。」

鶴見中尉の顔を見てゾクっと背筋が冷える。
改めてこの人は怖い人だと思い知らされた気がした。

.