【金カム夢】雪に拐かされ… (ページ12)

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傷の男ページ12

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男は銃を構えたが、尾形上等兵の手にあるボルトをみて「あ！」と声を漏らし驚愕した。

男との組み合いで「外套は邪魔だ」と判断した尾形上等兵が外套を脱ぎ捨てた。

私も戦闘に加わろうと構えると尾形上等兵の手が私の前に出されて制された。

尾形「貴様、何処の所属だ。」

「第一師団にいたが、こないだ満期除隊した。」

尾形「そうか！では二〇三高地辺りで会っていたかも知れんな。」

成程、相手は元兵士…情報を聞き出すのか。

今まで私は殺ししかして来なかったから何故尾形上等兵に止められたのか不思議だった。
不要な殺生は避けれれば避けると言う事か。

尾形「さっきの死体は大人しく此方に渡した方が良い。
あの戦争で拾った命は金に換えられんぞ。
どれだけ危険な博打に手を出しているのか分かっておらんのだ。」

尾形上等兵の言葉に構えを解き、「危険な博打」と言う言葉に鶴見中尉の顔が頭を過った。
あの人はきっと邪魔する人は容赦なく潰す。

「金じゃねぇ…惚れた女の為だ。」

顔に傷がある男の言葉に思わず私は目を見開き呆けてしまった。

惚れた…つまりは愛？

なら…この男は……その女の為に死ねる(・・・)のか？

私が呆けている間に二人の取っ組み合いが開始されていた。
気が着くと尾形上等兵の腕が折られ、銃剣で刺されようとしていた。

『させるか！！』

「ふんっ！！」

『ガハッ…！！』

男の言葉に油断していた私はものの見事に鳩尾に男の蹴りを喰らわされ吹っ飛んだ。

まずい…尾形上等兵殿……

「杉元ッ！！」

尾形上等兵が刺されると思った矢先に小さな足跡の持ち主が現れた。

尾形「第一師団の杉元…“不死身の杉元”か。」

『…！不死身…』

尾形上等兵の言葉に戦場で聴いたあの声が脳裏に蘇った。

「俺は不死身だぁ！！！！」

男…杉元の隙を突いて尾形上等兵が目潰しを喰らわせ立ち上がり、走り出した。

尾形「撤退だ！」

『！はいっ！！』

茫然としていた私は尾形上等兵の声にハッとなり、慌てて立ち上がり駆け出した。

尾形「この状況で“不死身の杉元”は手に負えん。
…片腕だけに」

『ﾌﾟﾌｯ…尾形上等兵殿…この状況で冗談言わ』

ボッゴオン

走っている最中にボソッと呟いた尾形上等兵の言葉に思わず吹き出してしまうと同時に飛んで来た銃が尾形上等兵の頭に命中した。

『尾形上等兵殿！！？』

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