生徒会長の恋事情せかんど【伊東歌.詞太郎】 (ページ27)

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第六十三話　平常心、平常心。ページ27

女子棟を出て男子棟へ入る。
今は午前だからちらほら女子がいる。

洸葵先輩の部屋は私と同じ最上階。
キョロキョロと周りの様子を伺いながら歩く。

なるほど。
男子棟はこんな感じなのか…。

正直、おしゃれにあまり興味がない私。
でも今日は自分なりのおしゃれをしてきた、と思う…。

「やっぱ男子棟は広い…」

男子とエレベーターという密室には入りたくないからあえて階段を利用する私。
やっと最上階に着いたときは息切れが半端じゃなかった。

少し歩いてある部屋の前で止まる。

…。
ここが洸葵先輩の部屋…。
緊張で震える手を握り締め扉をノックする。

「はーい」

少し眠たそうな洸葵先輩の声に体が固まる。
すぐそこに、洸葵先輩がいる…。

一歩下がって扉が開くのを待つ。
鞄を両手で握り締める。
普通にヤバいぞ…。

ガチャ

扉が開いて出てきたのはやっぱい少し眠たそうな洸葵先輩。

…。
平常心、平常心。
心のなかで何度も唱えて口を開く。

「おはようございます。眠そうですね…？」

自分の中で最大級の微笑みをして挨拶をする。

「おはよ。Aは朝から元気だね？」

先輩も微笑みながら挨拶をしてくれた。
あぁ、かっこいい…。
今すぐにでも聞きたい。
なぜ貴方はそんなにかっこいいんですかって。
反則ですよ。

「とりあえず、入って。汚いけど」

一歩、踏み出す。
玄関、でもないけれど一歩入ったらそこは洸葵先輩の匂いがする。
って当たり前か…。

「ごめん、俺完全寝起き。」

「見れば分かりますよ。先輩眠そうですもん。」

笑いながらベットの上に座った先輩の下に座る。
あえて隣にはいかない。恥ずかしいじゃん！

「テスト、どーだったの？」

「それ聞きますか…」

忘れたはずのテストという単語。
先輩は無意識だろうか…。

「出来たと思いますか…」

「いや。」

ですよねー…。
その通りです。できませんでしたっ！

拗ねたようにそう言えば先輩は後ろから私を抱きしめた。
先輩のぬくもりが背中越しに伝わってくる。

「こ、うきせんぱ…」

A…

名前を呼ばれてぎゅっと抱きしめる力が強くなる。
その力もぬくもりも心地よくて目を閉じた。