【伊/東/歌/詞/太/郎】 秘 蜜 。【学/パ/ロ】

あのね、先生。 ページ27

そんなこんなで、教室に戻るとき。

お手洗い行ってきます、先戻っててくださいって先生と別れた。

トイレ行きたかったのは本当だけど、一緒に戻ってったらあいつらになんて言われようか……。
露骨に嫌な顔する姿を想像して溜め息が出た。

つーかあの人たちのこと考える時間が無駄だな。



そろり、と教室に入るつもりで取っ手に手をかけた、その時だった。


「先生！！」

「歌詞太郎ちゃん、どーゆーこと！？」



………え？

大きな声が二つと、ヒソヒソ声がたくさん。

先生の声は聞こえないまま 上原さんと下岡さんの声だけが重なって聞こえる。





「なんで、天野と抱き合ってたんですか！？」








＿＿＿＿！！！





突如 出てきた私の名前とそれで全部分かった。
さっきの保健室の、見られてたんだーって。


深呼吸して扉を開く。手に嫌な汗が滲んで、指が震えた。

いいタイミングで現れた私に刺さる視線。先生の焦ったような目。上原が私を睨む目、下岡の涙で濡れた目。

泣いてる……大事じゃんか……


「ねぇ！！ アンタどういうつもりなわけ！？佑実泣いちゃったじゃん！」


「……何もしてない。勝手に泣いてんでしょ」



「っ！ ひどいよぉっ……！！」



ぎゅ、と先生の袖を引っ掴む下岡がますます鼻を鳴らす。


その様子を見て燻る黒いもやもやを鎮圧させようとすると、上原がスマホを突きつけてきた。


「こっちはちゃんと証拠、あるんだけど？」


画面に写る抱き合ってる男女は紛れもなく私と先生で。ここまで必死だったのかこいつらってちょっと笑いそうになる。
どうやって逃れるか、どうやったら先生は悪くないってことになるか。

これまで読んできた数々の小説、記憶してあるものからヒントを得て、拳をつくった。


「これ、私が全部お願いしたんだよ」



「あんたたちが前から変な嫌がらせしてくるから、先生に相談してたの。だって私も先生のこと好きだから」


目の前の上原の顔が怒りに染まっていくのを他人事みたいに見つめて、半笑いする。





「ここで抱き締めてくれなかったら、監督不行き届きで訴えますよって言っただけ」



拳をふりあげる上原。


あ、て目を瞑ると、左頬にゴンって衝撃があった。


はずみで地面に転がった私を再度殴ろうと馬乗りになる上原を見て、ああやっぱり私に平凡は許されないんだなって思う。



大混乱の教室。目を瞑ってもうどうにでもなれよって呟いた。














あ






先生、




ごめんね。

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