【伊/東/歌/詞/太/郎】 秘 蜜 。【学/パ/ロ】

あのね、先生。 ページ12

「！？ か、歌詞太郎って天野ちゃんのこと名前よびなんだ〜？」


「“先生”、でしょ。それに」



私を庇うように、一歩前に出た先生は上原さんを見下ろす。



「っ…」


「話、逸らそうとしても無駄だよ。

　…証拠もないうちは、誰が悪いなんて決めつけちゃダメ」




「……だって、最初に来たの天野ちゃんじゃん！！」



どうしてその子を庇うのか、と声を荒くした上原さんは、よほど私が気に入らないのだろう、

彼女のなかで犯人は私ということで決定しているらしい。



隣で俯いてる下岡さんのが、私はあやしいと思うんだけどなぁ。


「…Aさんは、僕と一緒にいたから違うよ？」


冷静さを失っている上原さんが喚くと、
息を漏らす位のちいさな溜め息をついて、先生は核心をついた。


「朝、Aさんが来たときに丁度僕が雑務をやり始めたところだったから、
　だから絶対Aさんじゃない」



低く、静かに言った先生。
力のこもった声に怯んで、上原さんは唇を噛み締めうつむく。



どうしてそんなのより私を優先しないの、なんて
思考が手にとるように分かるよ。



「でもほら、僕も犯人探しはしたくないし！
　Aさんへの疑いも晴れて髪飾りは無事、それでいいね？」

まとめるように問う先生に渋々頷いて、上原さんは席に戻った。





「！ あっ、あの…！ 先生、ありがとうございました」




がばぁっ、と面白いくらいに頭を下げる。
この人が来てくれなかったら私、ほんとどうなってたか……

今年どころか、高校生活が終わってしまうところだった。




それを考えた瞬間、急にフィルターがかかって神様にみえはじめた先生にぺこぺこする。



「Aはやってないからね、当然。
　じゃあ僕、職員室に用があるからまたあとで！」



急いで出ていく先生の背を見ながら、

教室に来る前に職員室に寄ればよかったのに、なんでそれをしなかったのかな、と考えて。




もしかして、その用事を抜け出して来てくれてたのかな。

校内をぷらぷらしてるそらる先生とかが伝えてくれたのかな、なんて




　







“先生が仕事より私を優先してくれた”んじゃないか、とか、
自分に都合のいい考えしか浮かんでこなくて。








(……？ へんなの)









内心小首をかしげつつ、伏せてあった小説を読み出した。





　






　





　





　




　





　
「…………っ」





　




　




　


私の気づかない内に刺さる、

二つ の、視線。

あの、“そらる”先生。→←あのね、先生。

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