79話 見えないな ページ36
ガタンゴトンと電車に揺られながら、外の景色が移りゆくのを見てボーッとしている。
まあ、移り変わって無いんですけど。
一面海しか見えないんだけどね。
病院に居たのは3時間ほどなのに、何故かそれ以上の時間が経ったかのような気がするのはなんでだろう...
『海しか見えないな〜...』
チラホラと電車に乗っている人はいるが、大体がご高齢の方ばかり。
私と同じで病院の帰りかな?
この電車、本線じゃないから、あんまり人が多くなくて気が楽なんだよね〜。
私はバスケ部にいたらあんまり感じられないけど、割と人見知りするタイプだから、人が少ないというのは、本当にラッキーだ。
『あ...そう言えば今日って、あの日か〜...』
周りに誰もいないせいか、ふと独り言が出てしまった。
慌てて口を塞ぎ、周りを見渡すが、遠くに座っているおばあちゃんは気持ちよさそうにうたた寝をしていたので、迷惑にはなっていないようだった。
いい感じに日が当たってて気持ちよさそうだなー...
話が逸れたけど、あの日とは、私がこの肩に怪我をした日なのである。
今から6年前か。
正直怪我をした直後の事は覚えていない。
だって、痛かったんだもん。
でもね、少しだけ覚えてる。
幸ちゃんはいつも私のヒーローだってこと。
〜
手術が終わった私は、病室で1人テレビを眺めていた。
お母さんやお父さんが見舞いに来てくれる中、幸乃さんに典男さん、学校の先生やクラスメイト、バスケのチームメイト、それに坂木さんたちも来てくれた。
坂木さんは、私に何度も謝っていて、許したと言っても謝り続けてくれた。
最終的にはお見舞品で果物を貰って、仲良くもなれたよ。
幸ちゃんは、1回も来ることは無かったけど。
幸乃さんが言うには、家で私の話をすることもなくなったらしい。
少しさみしい気もするけど、私は幸ちゃんに辛いことをさせてしまっていたんだと思って、何も言わなかった。
「あら、A。またお花が来ているわ」
お母さんが着替えを持って、病室に入ってきた。
荷物を抱える手の反対の手には、小さな花があった。
『ほんとうだ...!これくれてるのだれなんだろうねお母さん!』
実は私が入院をしてから、大体2日経った時からこの花は病室の前に置かれていた。
誰がこんな事をしてくれているのかはわからないけど、その花を見ていると、少しだけ、いやかなり幸ちゃんの事が恋しくなってくるのだった。
62人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
笠松もみじ(プロフ) - シャンプーさん» 作品を読んでいただきありがとうございます!面白いと言ってもらえる展開を書いていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします! (2018年1月26日 10時) (レス) id: a42261d885 (このIDを非表示/違反報告)
シャンプー - 小説面白いです!初めから一気に読ませて頂きました。次の展開が楽しみです☆更新待ってます(≧ω≦) (2018年1月24日 21時) (携帯から) (レス) id: 170aaa5bac (このIDを非表示/違反報告)
笠松もみじ(プロフ) - 氷食症さん» 面白いと言っていただけて幸いです!更新頑張らせていただきます! (2018年1月1日 20時) (レス) id: a42261d885 (このIDを非表示/違反報告)
氷食症(プロフ) - めっちゃ面白いです!!!更新お待ちしております! (2018年1月1日 17時) (レス) id: 4abaca475b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぴよ子 | 作成日時:2017年11月12日 15時