74話 ヒーロー ページ30
気付いた時には、Aはもう押し飛ばされていて、視界には坂木たちの姿しか見えない。
咄嗟に動いた足も間に合うこと無く、伸ばした手も届くこと無く、Aは階段下に落ちていった。
「A!!!おい!!A!!!」
すぐに階段を走って降り、Aを抱き起こす。Aは肩を押さえて痛がっていた。
下手に触らない方がいいのか。頭を打っていないのか。こういう時に限って、俺は今何をするべきなのかが出てこない。
『ゆ、ゆきちゃん...?なんっで...ここにっ...うっ...!』
「なんで笠松くんが...!」
「もしかして今までの見られてた!」
Aや坂木たちが話していても、俺の耳には何も聞こえなかった。ただコイツが痛がっている姿を見ているしか出来なかった。
「...そ、その子が悪いんだよ!笠松くんに付きまとってるから...!」
「...から...」
「え?」
「いいから早く先生達呼んでこい!コイツ病院に連れて行く方が先だ!!!」
「〜っ!!!もうなんなのよ!」
坂木それだけを言い残して職員室の方へと走って行った。他の2人も、心配そうにその後ろを付いて行く。
「A...すぐ病院連れて行ってやるから...!もうちょっとだけ、ガマンしてくれ...!」
なるべく肩に触れない様にAを抱き締める。弱っているAの姿を見たくなかったんだ。
俺のせいでこんな事になってしまったAを、見たくなかった。
『ゆき、ちゃん...助けに来てくれたの...?』
「えっ...」
『わ、たしね...いたっ...ゆきちゃんが来てくれるってしんじて、た...の..』
「い、痛いんだろ...!無理するなよ...!」
『だってね...ゆきちゃんは、わたし、の...ヒーローだもん...』
Aの頬に1粒、2粒と水が落ちる。
『だから、泣かないで...ゆきちゃん...』
肩が痛くて痛くて、今にも泣き出したいのはAなのに...
痛めていない方の腕を伸ばし、俺の目から流れている涙を拭ってくれた。
「ごめん...ごめんな...A...」
ドタバタと、数人の足音が聞こえてきた。
大丈夫か!と教師が俺たちに声を掛けてくる。坂木たちが事情を話したのか、今救急車がこちらに向かっているらしい。
Aは一度保健室に運ばれ、肩を動かさないようにと応急処置をされ、すぐに来た救急車へと運ばれて行った。
俺達はと言うと、後日話を聞くと言われ、家へと帰された。
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笠松もみじ(プロフ) - シャンプーさん» 作品を読んでいただきありがとうございます!面白いと言ってもらえる展開を書いていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いします! (2018年1月26日 10時) (レス) id: a42261d885 (このIDを非表示/違反報告)
シャンプー - 小説面白いです!初めから一気に読ませて頂きました。次の展開が楽しみです☆更新待ってます(≧ω≦) (2018年1月24日 21時) (携帯から) (レス) id: 170aaa5bac (このIDを非表示/違反報告)
笠松もみじ(プロフ) - 氷食症さん» 面白いと言っていただけて幸いです!更新頑張らせていただきます! (2018年1月1日 20時) (レス) id: a42261d885 (このIDを非表示/違反報告)
氷食症(プロフ) - めっちゃ面白いです!!!更新お待ちしております! (2018年1月1日 17時) (レス) id: 4abaca475b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぴよ子 | 作成日時:2017年11月12日 15時