同じ高校に来るわけがない【◆赤司】 ページ22
「決めたのかい?」
「関係ないでしょ」
職員室から出てきたAと鉢合わせた。
僕は知っている。
君が選ぶれであろう学校を。
そもそも、Aがバスケを捨てきれていない事は
前提としてわかっている。
だから、必ず僕達の誰かと同じ学校を選ぶ。
でもテツヤと大輝ではない。
Aは、自分が大輝と戦いたいのだから
それを投影できる誰かを選ぶ。
「まぁ、だいたい検討はついてるよ」
「…昔のアンタになら教えていたかもね」
昔というのは、僕の中にいる僕のことなのだろう。
「そうか、それは残念だ。もう会うことはないだろう。」
そう伝えれば、ほんの少し悲しそうな顔をした。
「赤司も、ひとりで大変だったんだろうね」
ポツリと呟いたことは、もう一人の僕に言っている。
「私は、自分ばっかだったから…、もう戻れないけど、そこだけは後悔してるよ。ちゃんと、話をすれば良かったって。」
「…君が弱音を吐くなんて珍しいね」
「べつに。で、アンタは洛山だって?」
「知っていたのかい。」
知っていたところで、僕の学校へは端から来る気はない。
だから、僕は君を誘ったりしない。
「アンタらしい選択だと思ったよ」
君はやはり、とても賢いな。
「バスケを辞めたのに、詳しいんだな」
嫌味を言ってみたが、全く動揺していない。
「大輝が、月バス片付けないから、つい見ちゃうだけ」
君たち兄妹が仲違いしなければ
少しは僕達も違っていたのだろうか…
そんなふうに、僕はずっと
部員でもなかった君の責任にしてきた。
君は気づいていなかったんだろうな。
君が青峰に勝とうと、いや
離されないように追いつこうと努力する姿は
少なからず皆に影響を与えていた。
そして、そんな君を
皆が傍に置きたがっている。
きっと、僕の中の僕も。
でも、君は賢くて強かで
望んでいる景色はただは一つ。
「君の目には、やっぱり大輝しか映ってないようだ」
「は?何言って…」
最後に、君を揺さぶってみたい。
「君が、今やろうとしている事は、
本当に大輝の為になることなのかい?」
それに傷付いた顔をした。
でも、いい。
どうせ僕と一緒に来ることはないのだから。
「君は大輝の傍にいるべきだ」
最後の忠告をした。
でも、君には絶対に届かない。
さっきの傷付いた表情から一転して
青い瞳は揺らぐことなく、真っ直ぐ僕を射抜く。
「もう、決めたから」
振り返らず歩くその姿は勇ましい。
あぁ、やっぱり君が欲しかった、かな。
海常なんて聞いてない【◆青峰】→←同じ高校に来て欲しい【◆黄瀬】
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作者名：chieko | 作成日時：2023年12月4日 23時
