同じ高校へ行きたい【◆黒子】 ページ17
いつものように
屋上で上着を着ながら寝ている彼女。
季節は寒くなってきて
僕達3年生は受験シーズン。
それでも、彼女は
どこでも入れる頭脳を持ち合わせているから
焦る様子など一つもなく
むしろまだ目指す進路を決めきれていないようで
担任の先生を困らせていた。
「どうするんですか?その真っ白の紙」
第3希望まで書かなければいけない進路希望の紙は
真っ白で、書かれた様子すらなかった。
「わっかんない」
ぼうっと曇った空を見ながら呟く彼女。
「青峰くんは、桐皇から推薦来てるみたいですよ」
「知ってるよ。」
なんとなく…
Aさんは、結局
青峰くんと同じとこに行くと思っていた。
それが当たり前のような感じ。
多分、青峰くんも桃井さんもそう思っている。
「素直に、桐皇って書いたらいいじゃないですか」
そう言えば黙っている。
「テツは、決めたんだったっけ?」
淡い期待が入り混じる。
「はい。誠凛に決めました。」
僕と同じ学校を選んでくれないかな…なんて。
「どこそれ?聞いたことない」
それは、バスケ部として、だと思う。
「とても、バスケを楽しそうにする学校です」
「ふーん、テツらしいね…」
最近ではずっと、悲しい顔でしか笑わない。
「Aさんは、アメリカ行きたいんですか?」
去年の今頃、そう言ってたから聞いてみる。
「行かない。親に反対されたからねー。」
ハッキリ答える。
「じゃあ、◯◯高校とかですか?」
バスケ部がない都内トップの進学校を出してみる。
「ははっ、ないない。つまんないって、絶対」
ハッキリ答える。
「じゃあ、✕✕高校ですか?」
女バス強豪校を言ってみる。
「…今は、興味ないかな」
少し間が合ったのは、昔の志望校だからだろう。
じゃあ…
「僕と一緒の誠凛に行きませんか?」
Aさんは、目を見開いてこちらを見た。
「これは、ただ僕の我が儘ですが…」
伝わってほしくて、
真剣に言葉を選んでいく。
「Aさんには、同じベンチで応援して欲しいんです」
Aさんは驚いた顔をしたかと思うと
眉を下げて笑った。
「バカだな…私がテツ以外を応援するかよ」
肯定でも否定でもない。
答えになってない事を言われた。
ブワッと突風が吹き
進路希望の紙を空に巻き上げていく。
「あーあ…また、先生にもらわなきゃ」
Aさんは、苦笑いして、その行く先を見つめる。
「テツ、ありがとね」
それは、"行かない"ということなんだと思った。
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作者名:chieko | 作成日時:2023年12月4日 23時