トリガー【◆赤司】 ページ12
「ちょっと赤司、また伸びた?」
「成長期だからね」
入学当初、彼女より低かった身長は
いつの間にか彼女を越していた。
彼女は小6までは平均より高い方だったのだが
中学に入った途端、全く伸びなくなったらしい。
別に、低くはない。
女子の中ではごく一般的な身長だと思う。
でも彼女が目指しているのは
青峰の隣だから、気になるのだろう。
その青峰は絶賛成長期で
日に日に伸びている気がする。
「テツにも負けそう…」
青峰達とバスケをしている
仲間内で一番低い黒子を見て
また溜息をついていた。
中学2年になって、男女の差を
特に気にしているとは感じていた。
「身長なんて、気にしなくていいんじゃないかな」
なんて言ってみても
顰めっ面を見せるだけ。
「せめて170欲しかった。そしたら…」
青峰を見つめる瞳は悲しそう。
最近はいっつも、こんな瞳だ。
前はただキラキラしていたのに。
そして彼女が言おうとしていることは
何となく予想できている。
「そしたら、もっとやれることがあった?」
Aは目を大きく見開いた。
気づいてはいた。
彼女は、青峰を模倣していると。
「怖っ…だから、赤司は苦手なんだよ」
盛大に溜息をつきながら、頭を垂れる。
「青峰は、Aとバスケができるだけで…
十分嬉しいと思うよ。」
本音だった。
慰めでも何でもなかったのに
彼女は辛そうな顔になった。
「そんな簡単な話じゃない」
いや、簡単な話だった。
Aが意地を張らなければいいだけだったんだ。
青峰がちゃんと言葉で伝えてあげれば良かったんだ。
＿＿いっそのこと、男バスに入部したら?
頭に浮かんだ事は、言葉にできなかった。
彼女が女バスで満足できていないことは
誰の目にもわかっていた。
でも、彼女はバスケをするべき人だから
男バスに勧誘することなんてできなかった。
マネージャーとして入れなんて
彼女のプライドを傷つけるだけだと思った。
でも、今思えば
彼女がマネージャーとしてでも
青峰の、俺達の近くに居てくれていれば
何か変わっていたのかもしれない。
「なんでバスケ辞めたんだよ!」
青峰の怒声が飛ぶ。
「何にも知らないくせに」
Aは泣きそうに顔を歪める。
一体、どこをどうすれば元に戻るのだろう。
考えても考えてもわからない。
俺は、全くわからなかった。
＿＿だから、僕は、全部彼女のせいにした。
彼女が、引き金をひいた。
この事がきっかけで僕達は崩れていったのだ、と。
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作者名：chieko | 作成日時：2023年12月4日 23時
