オセロその後【黒バス】 (ページ17)

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海常祭　④ ページ17

「笠松先輩、クレープ食べましょう」

なんでも、今年は中村と早川のクラスが
クレープをしているらしい。

去年は小堀のクラスがクレープをしていて
２人で買いに行ったなぁ…と思い出す。

違うことといえば…
Aの手がしっかり俺の手に繋がれていること。

「あれ?デートですか?」

俺らを見た中村が
ニヤリと笑って聞いてきたことに

「…そうだよ」

と眉間にシワを寄せながらも肯定したことである。

「うわ!!笠松先輩!!お久しぶ(り)っす!!」

早川はこちらの変化に気にも止めず
相変わらずで少し安心した。

「中村先輩、早川先輩、チョコバナナ一つ」

Aはというと、やっぱり相変わらずで
最早今は、クレープのことしか頭にない。

若干呆れていると、中村も同じ顔でAを見ながら
はいはい、と頷き調理している生徒に注文を伝えていた。

「A、今日可愛いな!頭も服も」

「本当ですか?早川先輩と中村先輩も、後でうちの喫茶来てくださいね」

早川がAと喋っているのを
黙って聞いていれば
知らない奴…
恐らくバスケ部の新入部員の名前を出しながら笑い出した。
仕方ないが、若干の疎外感。

「ヤキモチ焼きは相変わらずですね。」

「…何がだよ」

中村に言われた事にビクッとなりながらも
平静を装って答えれば、呆れたような顔を見せていた。

「仲良いのは結構ですが、首につけるのはやめてもらえますか?アイツ最近、部活中は結んでるんですよ」

何のことか、一瞬わからなかったが
ついこの間つけてしまった跡のことが頭に浮かんだ。

「どういうつもりか知りませんが、俺しか見てませんから」

「悪ぃ…」

…すげぇ気まずい。
俺としたことが、元キャプテンの面目丸つぶれだ。

「どーぞ」

クレープを差し出されながら中村がニヤリと笑った。

「心配しなくても、うちでAを狙ってる奴なんていませんよ。黄瀬っていう手も足も出ないような男が常に隣にいるんで」

それはそれで腹が立つが
黄瀬もAも信用してるし…
良しとするしかない。

中村にお金を渡してクレープを受け取った。

「A、ほら」

「ありがとうございます!」

その笑顔は去年と何も変わらない。

変わった事は…

「笠松先輩は?一口食べます?」

「ん」

小首を傾げて差し出されたクレープにかぶりつく。

去年できなかった事を
少しは平常心で出来るようになった。

「おいしい?」

と笑うAは
クレープを受け取った時よりも可愛い笑顔だった。