～鈴蘭の誓い～ (ページ9)

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誓いページ9

うらたさんとの約束事が増えたその日に私たちはマンションに向かい必要な物を全て纏めて詰め込む作業をしていた
理由としては「もしかしたらそいつが予定変更して明日とかに帰ってくるかもしれない、それなら今のうちに行っておいた方がいいだろ？」という、うらたさんからの提案だった

本当にこの幼馴染は昔から正義感が強く口が悪いけど、それでも隠し切れない優しさと弱い人には慈悲の心を持ち合わせている
そんな幼馴染だった

少し伸びた背と、少し低くなった声
それでも変わらない彼の姿に安心して泣いて縋ってしまった
本当に最初は酷いよねなんて笑い話にして暫く会えないと、遠くに行くねなんて話をしようとしたのに見透かされた様に全てを吐き出させ、私の奥の部分を救い上げてくれた

気付かさせてくれた

止めてくれた

感謝しても感謝してもしきれないくらい貰ってばかりだなぁと眺めていると「早くしろよ」と怒られてしまって、なんだか少し昔に戻った様で私は小さく「うん」と返す

「しかしまぁ…物の数時間で詰め終わる荷物しか無いんだな…」

「全部隠してる物以外は捨てられちゃったからね…」

「そっか…」
なんて彼が少しだけ申し訳なさそうに言っている姿があまりにも可愛らしくて私は思わず笑ってしまいそうになるのを堪える

「でもね！アルバムだけは隠しておいたんだよ」
そうして思い付いたかの様にキャリーケースから一冊のアルバムを出す

「！懐かしいなぁ…」
取り出したアルバムというのは私の幼少期から思春期に入るまでの物だった
うらたさんと映っている大事な大事なアルバム

「ふふっ…しんどい事がある度にこれを見ていっぱい元気貰ったんだぁ…
まだ見つかってなくてよかったよ」
アルバムを大事そうに撫で目を細め笑う私を見てどこか照れているかの様な反応をするうらたさん

「っ…もう詰め終わったなら行くぞっ！」
と耳まで顔を真っ赤にしてるのを見られたくないのか私の荷物をもって玄関を出ていく

「あ、待ってよ！」
なんて言いながら私も彼の後を追いかけるのだった

これから始まる彼との生活に少しの期待と不安と

春の香り