4 パンと取引 ページ4
とりあえず子供を家にあがらせ、パンを与えた。ひとまず事情を聞かねば、通報しようにも先方に説明もできない。
すると凄い勢いでパンを食らい、時折喉を詰まらせるので水を差し出せば、それも凄い勢いで飲み干す。なんだこいつ。
「御馳走様でした」
奇妙な挨拶を口にして、手を合わせた。意味不明だ。
「で、お前は？」
「僕はAです！」
「どこからきた？」
「東京です！」
「とうきょう、なんて町ないが」
「え？あ、じゃあ日本て国は知ってます？」
ニホンなんて国あるはずもない。
「学校は」
「学校は行ってないんです。高校を卒業してからは、色々フラフラしてて」
「おい中学の間違いだろう」
「え？」
子供は初め怪訝そうな顔をしたが、次第にしかめ面になっていく。
「僕、成人してますよ」
「……そのナリで、か？」
「失礼なっ！もうお酒も飲めますよっ！」
全身で怒りを露わにする少年…もとい男。いやしかし、どう見ても成人には見えない。顔立ち、姿、言動、全てが幼い。
「まあお前が子供か大人かなんてどうでもいいが、ここまでどうやって来た？｣
「ちょっと？！大人ですからね？！どうやってと言われても、寝て起きたらここにいたと言うしか……」
「……本当に大人ならもう少しマシな説明をしてくれ」
「だってぇ！本当なんですもん！目が覚めたらいきなりよく分からない恐ろしい生き物に襲われるし、尻尾や角が生えた変な人型の生き物が歩いてるし……！ここは夢なんだって思っても、お腹はすくし、足は痛いし、言葉は全然わかんないし、だから本当にあなたに会えてよかった…！」
突如ボロボロと泣き始める男に、一体どんな情緒してるんだと問いたくなったが、これで嫌でもわかった。こいつは紛うことなく人間だ。
「お前も薄々わかっていると思うが、ここは悪魔のすむ世界、魔界だ」
「そう、ですか」
「そしてお前はここでは絶滅種とされる人間だ」
「……絶滅？」
「人間だとばれたら、どうなるんだろうな」
サッと顔が青くなる男。どうやら状況を理解したようだ。
「俺は面倒事が嫌いだ。だから通報する」
「……ぼ、僕がここで泣き叫べば不利なのはそっちですよ」
「なに…？」
「貴重な人間を私欲で嬲る極悪人だと。しかも幼い見目の」
「……」
「匿ってください。元の世界に戻れる日まで」
こうして俺とこいつの奇妙な同居生活が始まったのだ。
＊
隣で居眠りをし始めたAは、遠慮なしに俺の体を蹴りあげる。
こいつ、いつか通報してやる。
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奏(プロフ) - 本編もおまけもとっても面白かったです〜！友達以上恋人未満の関係の設定がめっちゃ良かったです！作品制作お疲れ様でした！作者様の他作品も見させていただきます〜！ (2023年2月25日 8時) (
レス) @page37 id: 89231dfe0c (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - ガスカさん» コメントありがとうございます！応援のお言葉本当に嬉しいです。とても励みになります！ (2022年12月18日 20時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
ガスカ - 続き楽しみにしています。頑張ってください!応援してます (2022年12月18日 18時) (レス) id: 59f6634a23 (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - ルーミアさん» コメントありがとうございます！主人公の過去については、ゆっくり紐解いていきますので、気長にお楽しみいただければと思います！ (2022年12月5日 19時) (レス) @page16 id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
ルーミア - 昔に何があったのでしょうか気になりますね！次の更新頑張ってください！楽しみにしています (2022年12月5日 14時) (レス) @page15 id: 1c035b5819 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：南条 | 作成日時：2022年11月18日 8時
