27 やさしさとあたたかさ ページ27
「悪魔用の薬は飲めないからな、己の免疫細胞に賭けろ｣
そう言ってカルエゴさんが持ってきてくれたのは、お粥だった。
白米とよく似た魔界のお米。それを柔らかくなるまで煮て、塩で味付けをした胃の消化に良い料理。それをカルエゴさんが知っていたことにも驚きだし、何よりこの温かな湯気に包まれると、昔を思い出す。
ひとさじ掬って、口に含む。
このやさしくてあたたかい味。
じわじわと、母との記憶が蘇る。
母が生きていた頃にも、こうして看病してもらった。
あの時の味と、同じ。
「おいしい、です。すごく、すごく｣
「……そうか｣
あぁ、ダメだ。ぽたりぽたりと、涙が落ちる。
どうして、死んじゃったんだろう。
どうして、自分から死んじゃったんだろう。
「……僕の、おかあさん、子供の頃に自 殺したんです。僕の目の前で。理由は、今も分からないです。なんでだろうって、ぼくのせいかなあって、ずっと思ってて……」
母は小学校の音楽教師をしていた。家にあるピアノで、よく母と遊んだ。その時の思い出は、キラキラと宝物みたいに輝いていた。
しかし父が家を出ていって、母は少しずつ変になった。
きっと僕のせいだ。僕がいたから、母は変になった。
そして、疲れたと言って、むこうに行った。
「最後に言われたんです��むこうでまた会おうね��って…なんで僕も連れてってくれなかったんだろう｣
「……愛だろ｣
「…え？｣
「お前のこと愛してたから連れていけなかったんだろ｣
「そう、かなぁ…｣
「それにお前のせいでもない。じゃなきゃ、また会いたいなんて言うはずがない｣
「それは早くむこうに来いって…｣
「なら連れていくだろ。お前には生きてほしいから、別れを告げた」
「生きてほしい…？」
僕は本当に生きていていいんだろうか。
孤児となった僕を引き取ってくれた叔父は、僕のことを邪魔そうにしていた。朝から晩まで家におらず、会話もない。家が完全に機能停止していて、ただ雨風をしのげるだけの箱だった。
僕は、ずっとそこにいた。
ひとりで、料理を作り、家事をして、学校に行って、適当にクラスメイトと話を合わせる、その繰り返し。部活に入る暇もなく、勉強もろくに出来なかった。
生きていても、本当に意味が無いと思っていた。
「お前は、生きていい。幸せになっていい」
僕は、この人と生きていたいと、ふと気づいた。
お粥を1口。また1口食べる。
この家には、やさしさとあたたかさがある。
僕はずっと、それを求めていたんだな。
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奏(プロフ) - 本編もおまけもとっても面白かったです〜！友達以上恋人未満の関係の設定がめっちゃ良かったです！作品制作お疲れ様でした！作者様の他作品も見させていただきます〜！ (2023年2月25日 8時) (
レス) @page37 id: 89231dfe0c (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - ガスカさん» コメントありがとうございます！応援のお言葉本当に嬉しいです。とても励みになります！ (2022年12月18日 20時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
ガスカ - 続き楽しみにしています。頑張ってください!応援してます (2022年12月18日 18時) (レス) id: 59f6634a23 (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - ルーミアさん» コメントありがとうございます！主人公の過去については、ゆっくり紐解いていきますので、気長にお楽しみいただければと思います！ (2022年12月5日 19時) (レス) @page16 id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
ルーミア - 昔に何があったのでしょうか気になりますね！次の更新頑張ってください！楽しみにしています (2022年12月5日 14時) (レス) @page15 id: 1c035b5819 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：南条 | 作成日時：2022年11月18日 8時
