17 猫と予感 ページ17
「あ、あの…あぅ……近、」
「じーー」
僕は今おっきな猫ちゃんに体に穴が空きそうなほど、じっと見つめられている。
別に悪いことをしたわけでもないのに、ダラダラと冷や汗が流れる。感情の読めない瞳に見つめられると、心の奥底を覗かれているようですごく居心地が悪い。
「オペラ先輩」
カルエゴさんの声で、ようやく目線が外れる。やっと息が吸えた。
突然家に、燃えるような赤の髪を持つ人型の猫ちゃんがやってきた。
いや喋るし、二足歩行だし、猫型の悪魔の方が正しいかもしれない。
「カルエゴくん、いつの間にこんな隠し玉…いえ隠し子がいたんですか」
「隠し子じゃないです」
その探るような目線から逃れるように、カルエゴさんの後ろに隠れる。なんかこの猫ちゃん怖いよー!
「おや、もしかして怖がられてます?」
「フッ」
嘲るような笑いを零すカルエゴさんに、オペラさんは容赦なく肩パンを繰り出す。ね、猫パンチだ…
「そうだ、君にはこれをあげましょう。外に出られるおまじないですよ」
「え?外?」
するとシュッシュッと香水のようなものを振りまかれる。
しかし無臭で、本当に香水かどうかも怪しい。
「これを振りかけるだけで、変に悪目立ちしなくなります」
「へ、へえ…」
どうにも怪しさ満点だ。このまま高い壺とか売りつけられたりしない?
「君にはカルエゴくんがお世話になっているようですし、餞別です」
「で、でも、僕外には…」
「出たくないのですか?」
出たくない訳では無い。スーパーや本屋、服屋にふらっと入って、自分が好きだと思うものを買って楽しみたいと思う時もたまにある。
でも外に出るなと言われているし、人間だとバレて捕まったりするのは怖いし、不安は拭えない。
カルエゴさんの顔をチラと見る。
するとカルエゴさんはなんてことのないように答えた。
「別に、出たいんなら勝手に出ろ」
「え」
「ただし外に出る時は絶対にそれを振ってから」
え、いいの?
カルエゴさんが言うほどってことは、この香水の効果はそれなりに高いんだろう。
じゃあ本当に、大丈夫…なのかな?
「えと、じゃあ最初は一緒について来てくれませんか…?」
「……いいだろう。この辺に慣れるまでなら」
「あ、ありがとうございます…!あの、オペラさん!有難く頂きます!」
「はい。ぜひ沢山使って下さい」
僕の魔界ライフは、これからもっと広くなっていく。
そんな予感が僕の胸を高鳴らせた。
__
「随分と過保護ですねぇ」
「…煩いです」
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奏(プロフ) - 本編もおまけもとっても面白かったです〜!友達以上恋人未満の関係の設定がめっちゃ良かったです!作品制作お疲れ様でした!作者様の他作品も見させていただきます〜! (2023年2月25日 8時) (レス) @page37 id: 89231dfe0c (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - ガスカさん» コメントありがとうございます!応援のお言葉本当に嬉しいです。とても励みになります! (2022年12月18日 20時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
ガスカ - 続き楽しみにしています。頑張ってください!応援してます (2022年12月18日 18時) (レス) id: 59f6634a23 (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - ルーミアさん» コメントありがとうございます!主人公の過去については、ゆっくり紐解いていきますので、気長にお楽しみいただければと思います! (2022年12月5日 19時) (レス) @page16 id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
ルーミア - 昔に何があったのでしょうか気になりますね!次の更新頑張ってください!楽しみにしています (2022年12月5日 14時) (レス) @page15 id: 1c035b5819 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:南条 | 作成日時:2022年11月18日 8時