15 無力とひとり ページ15
カルエゴさんが手にしていたカトラリーが、空を切って床に落ちる。
「え?」
僕は状況が全く飲み込めなかった。人がいきなり姿を消すなんて、できるはずがない。いや、彼は悪魔だ。そんな力を持ってないとは言いきれない。
だけどいきなり話している途中にいなくなるなんてこと、あの人がするはずがない。いなくなるつもりならしっかりと断りいれるはず。じゃあつまり何らかの外部の力によって?
「っカルエゴさん!?」
家中を急いで探し回るが、姿はもちろんない。
誰かの力で、カルエゴさんは移動させられた。そう考えることが出来る。今すぐにでも外へ出て、探しに行きたかった。
だけどカルエゴさんには念押しされていた。
1人で外へ出るな、バレたらお前は終わりだ、1歩も出てはいけない。
だから僕は、外を知らない。
カルエゴさんが行きそうなところも、どこに何があるということも、僕は知らないのだ。
思わず床にへたり込む。
僕は、ひとりだ。何も出来ない、無力な。
「また、いなくなるのかよぉ……」
思い出したくもない苦い思い出が頭によぎり、僕は頭を抱えた。
__
「っっ本当にオペラ先輩はっ!!」
酷い目にあった。いきなり使い魔召喚されたと思えば、喚んだ当人の入間は苦笑いをするばかり。なんの用かと問いただそうとすれば、オペラ先輩の拷問に捕まったのだ。
疲れが溜まっているでしょうからメンテナンスしてあげましょうとか言って、存分にモフモフされた。完全にセクハラだ。
「どうせ1人寂しく家にいるだけなんですからいいでしょう」
と言われた時は、思わずカチンときた。勝手に1人であることを決めつけられるのは、腹が立つ。
「はあ?1人じゃありません。せっかく夕食を食べていたというのに……」
「…え。まさかカルエゴくん、彼女いたんですか」
「違います!」
ニマニマと話を聞く気がないオペラ先輩に翻弄され、泊まるのを執拗に迫られたが断固拒否し、入間になんとか召喚解除してもらい、自宅に戻ってきた。
食事も途中だった。机の上には、途中の皿が並んでいる。しかし、何故かあいつの姿がない。
「A?」
リビングにはいないようなので他の部屋を探してみると、廊下の隅で、体を縮こませて顔を伏せるAを見つけた。
「おい、どうし……」
「……ないで
おいていかないで」
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奏(プロフ) - 本編もおまけもとっても面白かったです〜!友達以上恋人未満の関係の設定がめっちゃ良かったです!作品制作お疲れ様でした!作者様の他作品も見させていただきます〜! (2023年2月25日 8時) (レス) @page37 id: 89231dfe0c (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - ガスカさん» コメントありがとうございます!応援のお言葉本当に嬉しいです。とても励みになります! (2022年12月18日 20時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
ガスカ - 続き楽しみにしています。頑張ってください!応援してます (2022年12月18日 18時) (レス) id: 59f6634a23 (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - ルーミアさん» コメントありがとうございます!主人公の過去については、ゆっくり紐解いていきますので、気長にお楽しみいただければと思います! (2022年12月5日 19時) (レス) @page16 id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
ルーミア - 昔に何があったのでしょうか気になりますね!次の更新頑張ってください!楽しみにしています (2022年12月5日 14時) (レス) @page15 id: 1c035b5819 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:南条 | 作成日時:2022年11月18日 8時