13 杞憂と心配 ページ13
2人が隣の部屋から出てきたのは、随分と後の事だった。
かれこれ1時間は話してたんじゃないか。
「随分長かったな」
「わ、随分話し込んじゃった!ごめんね」
「いえいえ。とてもタメになる話ありがとうございました」
そんなに長く、何を話し込むことがあるのやら。しかも初対面で。
「何を話してた」
「それは……秘密だよね!」
「はあ?」
なぜ隠す。2人は目を合わせて、くすくすと笑い合う。その様は、なんだか子供のようだった。
「晩御飯の準備しますねー。シチロウさんも、食べてってください」
「え、いや僕はいいよ!用意大変だろうし」
「全然平気ですよ。ぜひ御礼させて下さい!」
「……そう?じゃあ、お言葉に甘えちゃおうかな!」
ソファーで読書をしていた俺の隣に、シチロウが座ってくる。
「やー本当にいい子だね!僕てっきり君に手篭めにされてる可哀想な子かと思ったけど」
「おい。とんでもない失言するな」
「うんうん、杞憂でよかった!」
恐ろしい勘違いをされていたようで、思わず溜息を吐く。
なんだって勘違いするんだ、そんな仲に見えるわけないだろう。
「どうして彼をここに置いてるのかも少しわかったし」
「……」
「でももう少し、彼を外に出した方がいいと思うよ」
「……あいつのこと、気づいてるんだよな?」
「うん。気づいてるからこそだよ。心配なのも分かるけど、籠の中の鳥は、世界を知らないからと言って幸せでいられるとは限らないよ」
「……」
「それにカルエゴくんなら、余裕で彼を守れるでしょ?」
「それは、そうだが……」
物理的に守れるかどうかという点では、勿論守れるだろう。
だが、彼の存在自体を守れるかは分からない。
「どうしても心配なら、僕のツテにいい匂い消しの香水を知ってる人がいるから、今度用意するよ」
「……あぁ」
俺は、縛りすぎていたのか。外に出たいと一言も漏らさなかったあいつに甘えていたのか。あいつのことを、本当に考えてやれてなかったのか。
「出来ましたよー!」
カレー皿を運びながら、明るく声をかけてくるA。
既にその光景は、俺にとって日常となっていた。
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奏(プロフ) - 本編もおまけもとっても面白かったです〜!友達以上恋人未満の関係の設定がめっちゃ良かったです!作品制作お疲れ様でした!作者様の他作品も見させていただきます〜! (2023年2月25日 8時) (レス) @page37 id: 89231dfe0c (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - ガスカさん» コメントありがとうございます!応援のお言葉本当に嬉しいです。とても励みになります! (2022年12月18日 20時) (レス) id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
ガスカ - 続き楽しみにしています。頑張ってください!応援してます (2022年12月18日 18時) (レス) id: 59f6634a23 (このIDを非表示/違反報告)
南条(プロフ) - ルーミアさん» コメントありがとうございます!主人公の過去については、ゆっくり紐解いていきますので、気長にお楽しみいただければと思います! (2022年12月5日 19時) (レス) @page16 id: 97d2c6287f (このIDを非表示/違反報告)
ルーミア - 昔に何があったのでしょうか気になりますね!次の更新頑張ってください!楽しみにしています (2022年12月5日 14時) (レス) @page15 id: 1c035b5819 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:南条 | 作成日時:2022年11月18日 8時