十七輪 ページ28
どこか気の抜けたようなそーくんの声を聞きながら、私は二人分のお皿を用意し始めた。
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「ん、美味そうな匂い」
「本当。そーくん、手伝ってくれてありがとう」
あれから少しして、私達はやっと落ち着いて食卓につくことができていた。
そーくんが手伝ってくれたから、一人でやるよりも全然早く終わってしまった。
お礼を言うと、そーくんは、ん、と頷いて
「ほら、早く食おうぜィ。
腹減って仕方ねェんでィ」
と言った。
「そうだね。
じゃあ……いただきます」
「いただきやす」
私達は二人で手を合わせ、夕ご飯を食べ始めた。
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次の日の朝。
私は簡単な朝食を作り、そーくんと二人で食べていた。
テレビをつけてみると丁度ニュースをやっていた。
特にこれといって見たいものがあったわけではないので、そのままにしてご飯を食べている。
(昨晩も思ったけど……何だか少し、寂しいな……)
屯所の賑やかな食堂に慣れてしまったからか、二人きりの食卓は少し寂しく感じた。
鳥の鳴き声が響く中、そーくんはふと口を開いた。
「案外片付いてんな」
「……え?」
キョトン、としてそーくんを見ると、そーくんはぐるりと目線だけで家の中を見渡しながら言う。
「もうちょっと散らかってるかと思ったんだがねィ……案外片付いてて少し意外だったんでィ」
まぁ少し予想通りではあるがねィ、とその後にそーくんは小さく付け足す。
「ミツバ姉、結婚した後はこの家に戻って来ないつもりだったらしいから……。
必要最低限の物しか残ってないのかも」
そう言うとそーくんは「あァ……」とどこか納得したように、ゆらゆらと視線を彷徨わせながら言った。
言ってはいけないことを言ったかもしれない、と少しヒヤリとしたものの、そーくんは食べ終わったのかお箸を置きながら言う。
「んじゃァ、片付けにはそんなに時間かかんねェってことか」
「う、うん。……多分……」
曖昧な頷きを返すと、じっと見つめられ何となく居心地が悪くなる。
いや、正確には悪くはないんだけれど……何というか……は、恥ずかしい?
どきまぎしている私を置いて、そーくんは「ご馳走さん」と立ち上がってしまう。
ぼんやりとそれを見ていると、そーくんが私に目を向ける。
「ほら、早く食べなせェ。
今回の皿洗い俺がやっとくから」
「え……いいの?」
思いがけない言葉に目を瞬かせると、そーくんは頷いた。
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赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです!さっそくお気に入り登録しちゃいました!更新楽しみにしてます、頑張ってください! (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2019年9月11日 7時