十五輪 ページ26
「2つ下せェ」
「はい、毎度あり〜」
そーくんがお弁当を２つ受け取ると、車掌さんはまた歩いて行き、他のお客さんに声をかけていた。
「ほら、A」
呼ばれてハッと顔を上げると、そーくんはお弁当を差し出してくれていた。
「あ、ありがとう」
お礼を言って受け取って中を見てみると、色とりどりの旬の野菜がたくさん入っていた。
「わぁ、美味しそう！」
思わず声をかけると、そーくんも早速椎茸を頬張りながら「確かに美味ェ」と頷いてくれた。
そんなそーくんを見ながら、私も「いただきます」と手を合わせたのだった。
.
列車に揺られること数時間。
私達は武州に辿り着いていた。
列車から降り、思い切り武州の空気を吸い込むと、江戸に住むことにしたあの頃から時間は経っていないはずなのに懐かしい感じがした。
(色々あったから……かな)
江戸に行ってからは目まぐるしかったなぁ、と考えていると、同じように列車から降りて隣に立ったそーくんが言った。
「おい、何してんでィ。さっさと行くぞ」
「あ、うん」
もう随分と見慣れている武州の道を、そーくんの隣を並んで歩く。
(あぁ、そうだ)
ふとあることを思い立して立ち止まると、そーくんも不思議そうに足を止めて振り返った。
「おい、どうしたんでィA」
「そーくん。少し、寄り道してから帰らない？」
私のその言葉に、私が何を言いたいのか察したらしいそーくんは、「あァ」と頷いてくれた。
.
途中寄った花屋さんで花を買い、お寺さんでお線香を買ってから、私達はミツバ姉のお墓に立ち寄っていた。
空は既に赤く染まり、子供たちに帰宅を促すかのように烏が鳴いている。
そんな中、そっとお花をお供えしてから、私とそーくんは並んで赤く染まった墓石に向かって手を合わせる。
(ミツバ姉、元気？
私はちょっと……無理しちゃったかも。
だからね、少しだけ武州に戻ることになったの。
また江戸に戻っちゃうかもしれないけど……私が武州にいる間は毎日来るからね。
これからも私達を見守ってくれていると嬉しいな。
ミツバ姉も、そっちで元気でね)
ミツバ姉への挨拶を終え、何気なくそーくんの方をチラリと見る。
そーくんはまだミツバ姉に話しているようで、目を閉じて手を合わせたまま。
(やっぱり、そーくんって綺麗な顔してるよね……。
まつ毛は長いし、鼻はスッとしてるし……)
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赤羽@美羽(プロフ) - サクラさん» ありがとうございます！そう言っていただけるととても嬉しいです！これからもよろしくお願いします♪ (2020年3月13日 9時) (
レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
サクラ(プロフ) - めっちゃ面白いです！さっそくお気に入り登録しちゃいました！更新楽しみにしてます、頑張ってください！ (2020年3月12日 14時) (レス) id: 319352fe0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：赤羽@美羽 | 作成日時：2019年9月11日 7時
