七輪 ページ9
私はそんな2人の様子を見て立ち上がった。
「Aちゃん?」
ミツバ姉が不思議がって私を見る。
「今日は、姉弟水入らずで楽しんできて。
折角久しぶりに会えたんだから」
私がそう言えば、ミツバ姉は「でも……」と表情を曇らせる。
そんなミツバ姉に「相変わらずだな」と思いながら、私は笑顔で言った。
「私なら大丈夫だから。
それに、今日じゃなくったって私はいつでもミツバ姉といられるんだから」
そーくんは仕事があるから、次、いつ一日中一緒にいられるか分からないから。
「ね?」
と私が言えば、流石のミツバ姉も折れてくれて、
「分かったわ、ありがとう」
と笑ってくれた。
私が出た部屋から、そーくんがミツバ姉の手を引いて出て行ったのが見えて、私の選択が間違っていなかったことにホッとする。
目の前に立った影に振り返ると、いつの間にか隊服から着物に着替えたお兄ちゃんが立っていた。
「お兄ちゃん?」
「今日は俺も休みを取ったんでな!
どうだ?Aちゃん。
久し振りに、お兄ちゃんと出掛けないか?」
私は驚いて問い返す。
「……お兄ちゃんが、江戸を案内してくれるの?」
「あぁ!」
お兄ちゃんも忙しいはずなのに……。
私の為にわざわざ非番を取ってくれたことへの有難さと申し訳なさが入り混じり、私はただ、「ありがとう」と返すことしかできなかった。
屯所の中をお兄ちゃんの後ろについて出口まで歩いていると。
「おぉ!トシ!」
とお兄ちゃんが声を上げた。
「トシ」ってことは……
「十にぃ?」
お兄ちゃんの陰から顔を出せば、煙草を咥えている十にぃの姿がそこにはあった。
「久し振りだな、A」
「うん、久し振り」
十にぃも何も変わってはいなかった。
切れ長の目の奥にある三白眼の瞳。
端正な顔立ちも、低い声も。
ただ、ミツバ姉と同じように髪を短く切ってしまったところだけが、妙に目に付いた。
「トシは、これから仕事か?」
「あぁ。最近港に屯ってる奴らの件だよ。
もう少しで尻尾が掴めそうだ」
「そうか!トシは流石だなぁ!」
十にぃの仕事をする姿は異様なほど様になっているように見えた。
「……何だよ」
私がじっと見つめていることに気づき、十にぃは訝しそうに眉間に皺を寄せる。
「えっと……」
会えていなかった分の空白を埋めるくらい話したいことは沢山あったけれど、1つだけ。
今すぐ伝えておきたいことがあった。
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あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» 受験お疲れ様でした! (2019年3月1日 0時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» ありがとうございます!受験が終わりましたので、どんどん更新していきたいと思います! (2019年2月28日 19時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 赤羽@美羽さん» お忙しい中更新ありがとうございます!受験頑張ってください!これからも楽しく読ませていただきます。 (2019年2月11日 19時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
赤羽@美羽(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!もうすぐで受験が終わるので、そうしたらもっとテンポよく更新できるようになると思います!これからも読んでいただけると嬉しいです! (2019年2月11日 16時) (レス) id: 8b3b438a89 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 初めまして。沖田さんが好きで読ませていただいています。更新ありがとうございます。ミツバ篇好きな話なので、これから主人公ちゃんもどうなるか楽しみです! (2019年2月10日 12時) (レス) id: a0e0346a06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤羽@美羽 | 作成日時:2018年11月18日 2時