【銀魂】リコリスの花束を君に【沖田総悟】

三十三輪 ページ35

「ってぇ……」

「そーくん、大丈夫……？」

私からの問いかけには答えず、そーくんは言った。

「随分と俺には手厳しいな、近藤さんは……」

「それはお前が餓鬼だからだ。
トシがお前とおんなじことを言ったら、俺は奴を殴ったよ」


そう言ったお兄ちゃんの手も赤くなっていて、私は何も言えなくなる。


「俺たちゃそういう仲だろ。

誰かがねじ曲がれば、他の2人がぶん殴って元に戻す。
昔からそうだった。

だから俺たちは永遠に曲がらねェ！
ずっと真っ直ぐ生きていける。

テメェが勝手に掘った小せェ溝なんて、俺たちゃ知らねェよ！
そんなモン、何回でも飛び越えてって、何回でもお前をぶん殴りに行ってやる！」

お兄ちゃんはそこまで言って、やっと表情を和らげる。

「そんな連中、長ェ人生でも、そうそう出会えるもんじゃないんだよ。

俺たちゃ幸せモンだぜ？
そんな悪友を人生で2人も得たんだ」

お兄ちゃんはそう言って私達に背を向ける。

「総悟。
もし俺が曲がっちまった時には……今度はお前が俺を殴ってくれよな」



お兄ちゃんの姿が完全に見えなくなってから、そーくんはポツリポツリと言葉をこぼす。

「……惚れてたんですよ。本気で。

冷たく突っぱねられながら、それでもずっと、野郎の帰りを待ってた。
ずっと……。

ようやく吹っ切って幸せ掴みかけたと思ったら、またアイツだ。

何度姉上の邪魔をしやがる。

酷ェ奴だ」

「……」

「酷ェ奴だよ、ほんと。

……分かってまさァ、俺の姉上が、酷ェ奴に惚れる訳ァねえってことくらい。

本当は分かってた。
いつ死ぬとも知れねェ身で、野郎が姉上を受け入れることないってことくらい。
分かってた。
野郎が姉上の幸せを思って拒絶してたことくらい。
分かってた。
野郎も姉上の幸せを願ってることくらい。

……分かってたんですよ、俺ァ……。
でも癪じゃないですか。

野郎が気に食わねェ。

気に食わねェ野郎のままでいいんでィ」


そーくんはそう言って、「よいしょっ、と」と立ち上がる。


私がその姿を見上げていると、私の視線に気づいたのか、そーくんは私の頭をくしゃくしゃに撫でる。


「何でそんな顔してんでィ」

「……私、どんな顔してる？」

「泣きそうなぶっさいくな面」

「……不細工？」

失礼な、と憤慨していると、そーくんは優しい眼差しで言った。

「……話、聞いてくれてありがとな」

「……うん」

「旦那も。長ェ話聞いてくれて、ありがとうございやした」

「……え？」

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