凛と咲くその花は (ページ4)

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"でも、昨日プレゼントを買いに行った帰りに買ったプレゼントのその人にあげる方だけ車に落としちゃって、轢かれちゃって"
"それでちょっと辛くなっちゃって。せっかく買ったのにとか、渡せない、とか思って"
そこまで書いて、先生の顔を覗く。先生はどう思うだろうか。やっぱり紙を使っても本当にあったこと全ては書けなかった。嘘はついていないが、先生はそれに気づくのだろうか。気づいたらなにか指摘してくるのだろうか。素直になれない可愛くない私のことを笑うのだろうか。
「そうだよね。私にとってはそんなことだけど、高校生が買うネックレスって高いし特別だよね。彼氏さんが大好きなんだね」
「えっあっだ、だいすきです……」
やっと言葉を発した私を見て、先生は優しく微笑む。その笑顔に、素直に話さなかった罪悪感と、話せばよかったのにという気持ちが重なって少し素直に笑えなかった。
「こんなにかわいい彼女ちゃんに想われてる彼氏君は幸せだね。素直に言えばいいと思うよ。いっぱい彼氏君に慰めてもらいな。泣いて疲れたでしょ。ベッドで一時間寝ていきな」
「あ、ありがとうございます」
いそいそとベッドの中に入って、白い天井をじっと見つめる。また私は嘘をついてしまった。自分を守るために嘘をつくのは何回目だろうか。
はぁ、とため息をつけば、先生がそれに気づいたのか幸せが逃げちゃうよ～なんて茶化してきた。
────もう幸せなんて逃げているも同然だし、なんなら私が幸せを追い払った可能性だってあるけど。
自分が一番かわいいから、すぐ本音を隠してしまうし、自分は悪くないと最後まで主張をしてしまうのは私の悪い癖。大っ嫌いな私の性格。直そうとがんばっているのに、直せないままで結局翔真君に見捨てられてしまったのだ。
(ねえ翔真君ごめんなさい。かわいくなくてごめんなさい)
あなたが好きだった。あなたが私を求めてくれるのなら、精一杯あなたの好みの女の子を演じようと思ったが、結局私を知ってもらいたくてできなかった。
(ありがとう。こんな私を気長に待ってくれてありがとう。二年間付き合って手さえ繋げなかったのに)
私が不甲斐ないせい、私が可愛くないせい。
じんわりと濡れる目元に無視をして、震える吐息も無視をして、自分を抱きしめる。
(全部が私がかわいくないせい。だからしょうがない)
捨てられるのがしょうがないことに納得はできた。だけど、あの人の体温を知らずに終わるのは、少し寂しくて残念だった。