凛と咲くその花は (ページ12)

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【明日十時いつもの駄菓子屋の前。ある程度のお金は持ってきてね】
奉仕活動の一週間後に突然翔真君から来たメッセージ。ほとんど機能していなかった翔真君とのトークはやっと本来の仕事をし始めたが、私はそれのせいで軽く混乱してしまっている。なんでいきなり来たのだろう。純粋に付き合っているときですら機能していなかったトークが急にし始めたのだ。誰でも疑うだろう。
(しかも、ある程度のお金ってどこかに出かけるってことだよね？)
これはいわゆるデートになるのではないだろうか。考え出した途端ドキドキと騒ぎ始めた心に無視を決め込んで、しっかり朝食を取って少しオシャレをする。調子に乗っている訳では無いけれど、浮き足立つ心を鎮めるにはこうするしかない。だから仕方がない。後付の理由がぷかぷかと浮かんでは消えていく。
「行ってきます！」
「行ってらっしゃい」
私の背中を押す母の言葉と、今にも走り出しそうなくらいに嬉しそうな私の心に身を任せて、私はお日様の下に駆けて行った。

✲✲

(まだかな、翔真君まだかな。……集合時間になってないし、まだ来ないかな)
いつもの駄菓子屋の前。おばあちゃんからもらったラムネに入っていたビー玉を覗きながら、翔真君を待つ。まだまだ夏ではないとはいえ、今日は少し天気が良すぎるようだ。ぽかぽかと私達を包む陽気の中にひっそりと潜む眩しさが、汗を誘う。
「Aちゃん、もう一本ラムネ飲むかい？」
「あっそんな、お金払わせてください。今日は少し多めに持ってきてるんです」
おばあちゃんは私に無賃でラムネを飲ませたいらしいが、私は絶対に無賃飲食などしたくはない。それに、サービスしようとしてくれたおばあちゃんに敬意を表す為にもむしろ一本分くらい余計に払いたいくらいだ。
「おばあちゃん、払わせてください」
再度自分の気持ちをおばあちゃんに伝えようとそう言った時、ひょいと長い手が私の横からおばあちゃんの手のラムネをとって行った。
「おばあちゃん、久しぶり」
「翔真君じゃないか？なんだい今日は待ち合わせだったのかい。だからやけにAちゃんがおめかししてるわけだ」
「おっおばあちゃん！おめかしなんてしてないですから！」
どうしよう、オシャレをしていることがバレてしまった。恥ずかしい。これじゃまるで狙っているみたい。恥ずかしさから翔真君の顔を見れなくて俯いた時、背後からあのぉ、と可愛らしい声が響いた。