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4. ページ4

『……すみません、遅れました』




嘘。本当はほんの1分程度で着いた。遅れてなんかいない。

それでもこの男には、逆らえない。逆らってはいけない。たとえどんなに憎くても。
ぺこりとお辞儀をしてから車の助手席に乗り込む。





「フン。……じゃあ、行くぞ。今日の予定も確認してあるだろうな?」


『はい。最初にバラエティー番組の撮影、次に……』


「言わなくていい。興味がねえ」




スパリ、とでも音が付きそうな具合に切り捨てられる。
でもそんなことは日常茶飯事。

ぐっと言葉を堪えてから、すみません、と一言おいてから言葉を続ける。





『〇〇局です』

「最初からそう言えばいいんだ。
……ったく、お前は成長しねぇなぁ」




ゴツン。そんな音を立てて僕の頭を拳で殴る。

痛い。率直にそう思う。ジンジンと頭の芯がしびれるような痛み。
いくら殴られても、この痛みには慣れることはできない。
慣れたくもないが。




「……あ? 何だ、その目。文句あんのか? ああ?」

『……いえ、なにも』





そう答えると、彼は今注目している女優、モデル達がいかに素晴らしいかを饒舌に語る。
僕がどれほどまでに劣っているかという嫌味を混ぜながら。

彼女たちへの賛辞とともに、僕には卑下の言葉のみが掛けられる。




「お前は金になるからな。そうでなきゃこんな失敗作、誰が仕事を取ってきてやるか」




何度この言葉を聞いただろうか。何度この言葉を聞いて、泣きたくなっただろうか。

何十回? いや違う、何百回だ。








都会特有の均されたコンクリートの上、微かに車に伝わってくる振動に心を落ち着かせる。







……大丈夫。まだ限界じゃない。


そう自己暗示をかけて、彼にばれないようにこっそり目を閉じた。







ーーーーーーーーーー

石原 健一郎

この作品唯一のオリキャラです。

悪徳プロデューサー。元カメラマン。
Aのマネージャー的存在。


悪い人です。
もし「石原健一郎」という方がいらっしゃったら、すみません……。

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Knights を護る騎士でいたかった(プロフ) - 果凛さん» リクエストしたものを最後まで書いてくれてありがとう!凛ちゃんが引退しちゃうのは寂しいけど戻ってくるのを待ってます!また復活したらよろしくお願いします。完結おめでとうございました!!! (2017年11月30日 16時) (レス) id: 7e00625b4b (このIDを非表示/違反報告)
果凛(プロフ) - あっ、誤字って騎士ちゃんのコメントか! 勘違いした、ごめん (2017年11月27日 7時) (レス) id: dc990c7092 (このIDを非表示/違反報告)
果凛(プロフ) - Knights を護る騎士でいたかったさん» 全然大丈夫! むしろアイデアもらっちゃってごめんな汗 えっ、誤字ってた!? どこか教えてもらっていい? (2017年11月27日 7時) (レス) id: dc990c7092 (このIDを非表示/違反報告)
Knights を護る騎士でいたかった(プロフ) - 何処かしらだすっごい誤解字ってる… (2017年11月27日 0時) (レス) id: 7e00625b4b (このIDを非表示/違反報告)
Knights を護る騎士でいたかった(プロフ) - 完全に移すようなことはしないけど何処からしら似ちゃうかも… (2017年11月27日 0時) (レス) id: 7e00625b4b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:果凛 | 作成日時:2017年10月25日 16時

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