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カチャリと玄関の扉を開けると、いつものように小太郎がリビングから顔を出します。そうしているとなかなか可愛らしいものです。
いえ、もちろん普段も可愛いですが。


戸棚から餌を取り出して小太郎にやりますが、僕はなんだか食欲が湧きません。というか、何をする気にもなれません。

今日はなんだか、疲れました。

死ぬ気にもなれません。




制服のままでソファーに倒れ込みます。
少し固いので身体が痛いですが、そんな事気にしません。





〈…ぼくたちは、かなしんでいるんですよ〉






奏汰先輩に言われたことを頭の中で再生します。
僕は先輩達にとって、大切な人になれているのでしょうか。


枕元に置いていた写真立てを手に取ります。
その写真は、家族全員で撮った家族写真、らしいです。記憶が曖昧なので詳しいことは分かりません。

その写真の中には、父親と母親、少し背の高い男の人、僕がいます。きっと、この男の人は僕の兄なのでしょう。全員、向日葵が咲いたような満面の笑顔です。




『……大翔(ひろと)、兄さん』





僕のおぼろげな記憶の中で一人だけ思い出せる青年。それが僕の兄さんです。
といっても名前だけですが。

……そういえば最近、全身全霊で笑ったことがないかもしれません。
表情筋は死んでしまったのでしょうか。それは、アイドルとして困ります。





…僕が死にたい理由は、何なのでしょう。
意味は無いのに死にたいと思うものなのでしょうか。
だんだん、僕はどうしたらいいのか分からなくなってきました。


とりあえず、体を洗いましょうか。奏汰先輩と噴水へ入ったせいで少し髪の毛がベタつく気がします。奏汰先輩は毎日こんな感覚を味わっているのでしょうか。


服を脱いで洗剤につけてみますが、制服に染み付いた匂いもなかなか取れません。

先輩に、というよりはどちらかというと先輩のご両親に同情します。
毎日の洗濯が大変そうです。



暖かいシャワーを浴びていると、少し気分が落ち着いてきました。

お風呂に入るのもそこそこに、濡れた髪の毛を乾かします。
髪の毛も大分伸びてきましたね。もうそろそろ切ってもいいかもしれません。


お風呂場を出ると、そのまま自室へ入ります。

力なくベッドへ倒れ込むと、直ぐに瞼が降りてきます。
今日は金曜日。明日は何もありません。




今日は、本当に疲れました。

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無名(プロフ) - 何年も前の作品みたいなのでお返事は返って来ないんだろうし伝わることもないのかもしれないとは思いつつも最高の話すぎてコメントを残したい。思わず涙出るほど感動しました。いいテンポで進んで読みやすかったです。最高の作品をありがとうございます。 (2023年1月3日 8時) (レス) @page47 id: 04d38e0bdf (このIDを非表示/違反報告)
咲耶(プロフ) - この話凄く好きです。感動しました! (2018年10月16日 5時) (レス) id: e18275a362 (このIDを非表示/違反報告)
早姫(プロフ) - 感動しました〜...!こう...仲間の大切さとか、友情ってこんな感じなんですかね?もしも、男主君が転生したら今度は幸せになって欲しいです〜!感動し過ぎて、涙が止まらず親に驚かれました...( ̄▽ ̄;) (2018年5月24日 17時) (レス) id: 37587c2084 (このIDを非表示/違反報告)
果凛(プロフ) - かきぴーさん» 返信が遅くなり、申し訳ありません汗 そこまで言っていただけるなんて……!ありがとうございます。目を擦ったら腫れるので、ちゃんとハンカチで押さえてくださいね。笑 (2018年3月21日 8時) (レス) id: 38593f3572 (このIDを非表示/違反報告)
かきぴー - さっきから目を開いても前がよく見えないと思ったら瞼が腫れてるだけでした。めっちゃ号泣しました!!!隊長イケメン!!好き!!好きです!!!最後は家族の元に旅立ってしまった男主でしたが、仲間の大切さがよくわかる話でした!! (2017年12月15日 22時) (レス) id: 41dff5bdb3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:果凛 | 作成日時:2017年8月30日 17時

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