45.愛すべき私の家族 ページ47
あれから私は、心の中で行き場のない感情を父にぶつけた。
人を殺したという事実はあまりに恐ろしく受け入れられなかったため、呪詛師である父のせいにしたのだ。
そうだ。私はどこかで、人を殺した娘を捨てずに罪を被ってくれた父に安心していた。
あなたからの愛を知ったのは、それが最初で最後だったから。
ーーーすると突然、全く
さっきの夏景色とは反対に、凍えるような雪吹雪。
多分、さっきの記憶より随分前のものだ。
はぁ、はぁ、はぁ。
男の息が聞こえる。私はだんだんと彼の心に憑依していって、雪を一歩ずつ踏む音が鮮明になっていく。
ああ。私はこの感覚を知っている。
孤独、罪悪、嫌悪、怒り…初めて人を殺した感覚だ。
｢あ、あああ…｣
父の掠れた声が雪に溶ける。
誰も味方してくれなそうな情けない声。
いや、違う。
誰も味方してくれなかったんだ。
いや、それも違う。
味方も敵もいなかった。
一人だ。
父はずっと一人だった。
ーーー早朝。それはまだ、小鳥しか起きていない時。
私が友達を殺した翌日の朝だろうか。縁側に立ち、焼き焦げた床を眺めている。
｢潔く死ねると思わないで下さいまし｣
背後から母の声がした。屋敷の刀掛けから盗んだ打刀を構え、切っ先を私に向けている。
｢
父の声が直に響き、私はこれも父の記憶であることに気づいた。
｢あなたは今日、病弱な女の手によって地獄へ堕とされるのです。｣
｢はは。それでも殺せないのだから、呪術師も務まらぬものよ｣
｢侮らないで下さいまし！Aの罪を隠蔽したところで、それが父親の務めになるとでも！？｣
母が怒鳴った。こんな姿は初めて見た。
反対に父の脈は落ち着いている。その心臓は冷淡に、ただ生命としての機能を果たすべく動いている。
｢なんだ、気づいていたのか｣
｢弥恵はいつまでもあの子の幸せを願っています！それはあなたも同じのはず。なのに…なのにどうして！｣
｢…そうだな。私はあの子に1度も外で遊ばせてやれなかった。だからせめてもの償いとして、この呪いに終止符を討ちたい｣
ゆっくりと、弥恵に近づく。刃物を持つその手が震えている。
｢Aのおかげで思い出したよ。人の命とは尊いものだ。｣
私は妻を抱きしめた。
｢ありがとう。
私は、誰も殺せない君を愛していた。｣
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 47人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
tomishiro(プロフ) - また、本作はバトル描写が中心であり、恋愛描写は続編で明確になります。後者をご希望の方はもう少しお時間を頂きます。どうかご確認下さい。(こんなとこで話してますけど) (2022年6月20日 1時) (
レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
karenyoshi0308(プロフ) - 八重はいつか夏油と結ばれるんですか？ってコメント頂いたんですけど、難しいところです。 (2022年6月19日 22時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：とみしろ x他1人 | 作成日時：2022年6月3日 10時
