44.蚊取り線香 ページ46
「
ボオオオン!!!
『熱い…』
"越境"では花火が上がったそれは、"回帰"では爆発そのものだ。もちろんダメージが跳ね返ってくる。火傷跡となって。
火之迦具土とは、日本の神々の起源であるイザナミから生まれた火の神である。しかし、イザナミは彼を産む時に酷い火傷を負って命を落とす。激しい憎悪を抱いた夫のイザナギは、彼の首を切り落としてしまった。
その怨念が、私の術式に受け継がれている。
「私の術式ーー
『!!』
火傷跡が回復する。今分かった。これは反転術式だ。前に無傷だったのもこのおかげだろう。
これなら無限に戦える!
「
空亡を使って、猿謡の後ろにある瓦礫の欠片を吸い込んだ。背骨を砕く勢いで引き寄せ、呪力を込めた拳を突きつける。
猿謡は、意味深に笑った。
『
ザシュッ!!!
「………え」
視界が真っ黒になった。血が首筋を伝う感覚がする。
...まさか、目をやられた!!
「ッヅ!?」
『馬鹿だなぁ』
早く早く、反転術式を!
『炎に弱い理由は俺にも分からなかった…だが、今分かった。俺は炎でなく、お前の術式に弱いのだ。何せ両面宿儺が関わっているからなぁ』
「っ…」
ああ!意識が…!
『つまりお前は…先祖の術式と父親の縛りのおかげで俺と戦って逃げれた。お前自身は弱い…』
駄目、起きて…もう友達を、失いたくない…!!
「いやあああああああ!!」
「A!?どうした!!」
夢を、見た。
「お父さ…」
ある夏の猛暑日。
1人の子供と縁側の一部の床が、焼き焦げていた。
父に続いて、母が駆けつける。
「ヒッ!?これは」
「私がやった」
父が言った。
「…突然、この子供が愛する我が子を日の下に連れ出そうとしたんだ。
私は思わず、蚊取り線香に付けるはずのマッチを投げつけてしまった。ああ、でも。
炎天下だというのに、涼し気な気分だ」
最後の言葉は、嘘か誠か。
いつもの冷淡な声色だったので、私には分からなかった。母はその場から崩れ落ち、体を這って私を抱きしめた。
私は、何も考えられなかった。
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tomishiro(プロフ) - また、本作はバトル描写が中心であり、恋愛描写は続編で明確になります。後者をご希望の方はもう少しお時間を頂きます。どうかご確認下さい。(こんなとこで話してますけど) (2022年6月20日 1時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
karenyoshi0308(プロフ) - 八重はいつか夏油と結ばれるんですか?ってコメント頂いたんですけど、難しいところです。 (2022年6月19日 22時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とみしろ x他1人 | 作成日時:2022年6月3日 10時