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25.父と子 ページ26

「A、1級倒したんだって?」
「2級だよ。あの呪いは″嫌悪″からなるものだった。宙くんの感情が暴走して、一時的に1級まで膨れ上がっただけ。」


悟くんは、ふーんと顔を傾けて舐めていた飴を歯で噛み砕いた。彼の物言いたげな雰囲気は前からだ。
私の顔を見るなり探るような言葉を使い、様子を伺っている。
悟くんらしくない。はっきり言って居心地が悪い。


「どうかした?」


思い切ってそう言うと、彼は痺れを切らしたように言葉を吐いた。


「お前さ、血縁と縛り結んだだろ。
ソイツの代わりに、結界内において呪力量が枠外まで跳ね上がる縛り」
「…え?結んでな、」


その時。記憶がフラッシュバックした。父親との記憶だ。

今まで私を家に閉じ込めていた父が、ある日、いきなり私を日の下へ連れ出した。








ミーンミーン…ミーンミーン…


「A、お日様は怖くないよ、出ておいで」


友達を失くした翌日。
いつも冷たい声で低く唸る父は、どこか(ほが)らかな雰囲気をまとって縁側に座っていた。

私は、父の言葉に酷く驚いた。
今まで日に当たるのを強く非難していたのに、この日突然、昼時の庭に出ろと言ったのだ。

未だ立ち直ることのできない私は、一部焼け焦げた床を見ないよう遠回りをして父の元へ向かった。


「…怖いよ、お父さん。」
「怖くないよ。」


娘が一向に日陰から出ようとしないので、父は着物の袖から手を伸ばした。
今まで私を日陰に引っ張ったその手が一瞬だけ優しく見えて恐ろしい。


「違うの。私が怖いのは…」
「大丈夫だから。」


私が恐れていたのは、紛れもなく父だった。

呪詛師という仕事に就く父。
人が死んだのに気にしない父。
寧ろ気分が良い顔をする父。

どうして今更、手のひらを返して頷くと思ったのか。

でも、私は拒むことができなかった。
気づけばその手を取っていて、足を踏み出してしまった。
父は固く、強く、私の手を握って、外へ引っ張った。



ボウッ!



「ぎゃあああああ!!!?」



あああああ!熱い!しんでしまう!!


燃えてる!!何も見えない!!


お父さん!なんでこんなことするの!!


お母さん!助けてよ!!


怖い!息ができないの、お願い、


やめて、


しにたくない…、


……。







「A、今から父さんの言葉を復唱しなさい」
「ああ、ア」






(なんじ)大地(うつく)しむ(しかばね)成りて、闇に照る炎、力宿らむ。″




26.真実→←24.怒れ、少女。



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tomishiro(プロフ) - また、本作はバトル描写が中心であり、恋愛描写は続編で明確になります。後者をご希望の方はもう少しお時間を頂きます。どうかご確認下さい。(こんなとこで話してますけど) (2022年6月20日 1時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
karenyoshi0308(プロフ) - 八重はいつか夏油と結ばれるんですか?ってコメント頂いたんですけど、難しいところです。 (2022年6月19日 22時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とみしろ x他1人 | 作成日時:2022年6月3日 10時

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