21.夏油と八重 ページ22
22時15分。
私は今、高ぶっている。
傑くんと共闘できる機会に恵まれたことへの嬉しさ。
宙くんを泣かせたことへの憤り。
朝から動きまくったための目覚めの良さ。
この心臓の音と体温を忘れるな。
夜明けまでに呪力を引き出す要となる。
今は傑くんの考えに乗る。
今まで習った体術を応用しながら、お互いの
ドッ!
傑くんが1級の周りを円を描くように走り、2級へ突進した。
私はそれ以外の呪霊を、術式を使わず体術で攻める。
余裕があるなら呪力の補給に回せ。夜はたっぷりある。
低級は弱いとはいえ的が小さく、素早かったら少し厄介だ。だから寧ろ雑に攻めた方が上手くいく。
『ヒギッ』
とはいえ、知恵がないので言わずともまとまってくれるのでありがたい。
今の傑くんは1つ呪霊を使った状態だ。できるだけ強い方を取り込もうとするだろう。
だが、
パシッ くるっ
『なんッ』
背中合わせになった互いの腕を掴み合い、回転して立場を変える。
目の前には1級。
まだ力をコントロールし切れていない呪霊。
奇遇だな、私もだよ。
見え隠れしている。
準1を飛ばして極端に強くなってしまった跳ね返りが。
「
ベコッ!!
空亡は、全てを吸い込める訳では無い。
呪力が練られたものや空間にしか存在できない。
ようは、帳などの結界内でないと発動しない。
また、自分より極端に強い階級相手には拒絶反応を起こして上手く発動できないことがある。
だからそれを坂手に取る。
「
すると、吸い込むはずだった空亡の見た目がますますグロテスクなものへと変化していく。
赤子の姿をしていたそれは、口を大きく開けてそこから体が反対方向へめくれていく。
外側が内側へ、内側が外側へひっくり返った。
赤い皮膚は青へと変わり、泣き声は無く、静かに眠っている。
瞬間、空亡の額に第二の目が宿り、体が白く光った。
ボウ!!とウニのように尖った青い炎が包み込み、
敵味方問わず無作為に炎の槍が落ちてくる。
「こっち見ろ下道が」
拳で顔面を殴りつける。
その見た目はすっかり2級に戻る。チャンスだ。
「
美しい花火が空に上がった。
汚い世界の終末を見届けるような、
あの子の安眠を祝福するような、
そんな花火だ。
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tomishiro(プロフ) - また、本作はバトル描写が中心であり、恋愛描写は続編で明確になります。後者をご希望の方はもう少しお時間を頂きます。どうかご確認下さい。(こんなとこで話してますけど) (2022年6月20日 1時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
karenyoshi0308(プロフ) - 八重はいつか夏油と結ばれるんですか?ってコメント頂いたんですけど、難しいところです。 (2022年6月19日 22時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とみしろ x他1人 | 作成日時:2022年6月3日 10時