20.夏と炎 ページ21
｢傑くん、まずはこの子を安全な場所へ避難させる。簡単な突破口を作って欲しい。｣
｢任せて。まったく…まだ温泉も行けてないのに｣
私の術式は破壊に重点を置いているもの。呪術とはいえ、見える者には害を与えかねない。
自分よりうんと背の高い2人の会話を聞いた少年は、ぎゅっと手を握り返す。
不安気に訴えるその瞳を見つめ返し、私は微笑む。
｢それまで絶対離さないし怪我もさせない。すぐ戻るよ。安心して。｣
｢来るよ。呪霊操術、
ぐっと手を引き寄せてその体をおぶる。
傑くんが左に、私は右へ別れた。もちろん呪霊は右を追う。
そこへ傑くんの海喃唄子が蜘蛛の糸を吐いて押さえつける。
みるみる変色する呪霊の体が波のようにうねったあと、大きく爆ぜて消滅した。
私はその間に屋上の柵を超え、405号室を目掛けて飛び降りた。
呪力を込めてベランダの手すりを掴み取り、念の為開けておいた扉の奥へ少年を入れる。
子供で助かった。大人1人抱えて逃げることはできないから。
ここで、呪術の基礎に見えて(個人的に)一番ややこしい呪符を用意する。
必要なのは1000円札を6枚。
呪力を込めて、部屋の全側面に貼る。
そこで私の炎の術式を使い、焼ききってしまう。
古代の文字で『封印』と書かれたものが焼け跡になって浮かび上がると完成。
(本当は術式なんて使わなくて良いけど、心もとないので。)
｢そうだ、君の名前は？｣
｢
｢宙くん、いい名前ね。私はA。ゆっくり話すからよーく聞いてね。
今から私たちは上に行って、夜明けまでに怖い奴らを倒してくる。
その間、宙くんはここにいる。絶対に外に出ないで、極力声も出さない。いい？｣
｢もし…もし怖い奴が襲ってきたら？｣
｢そんなことは絶対にさせない。私が保証する。｣
もちろん、こんな言葉では不安は抑えきれないだろう。でも大丈夫。
私は宙くんの額に人差し指と中指を添え、術を唱えた。だんだん目が虚ろになった宙くんを見届けて、布団に寝かせる。まだ9歳くらいだろう。
目尻に残った涙を拭い、頬にキスする。
お母さんじゃなくてごめん。また後で。
『いいい、あ、う』
｢喋れなくなってきたか。レベルアップしたとはいえ、まだ未完成なんだろう。呪力が安定してないよ。｣
そういう中途半端な時が一番隙を付かれやすいってこと、学習した方がいい。
｢傑くん、お待たせ！｣
｢お帰り。さっそく始めようか。｣
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tomishiro(プロフ) - また、本作はバトル描写が中心であり、恋愛描写は続編で明確になります。後者をご希望の方はもう少しお時間を頂きます。どうかご確認下さい。(こんなとこで話してますけど) (2022年6月20日 1時) (
レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
karenyoshi0308(プロフ) - 八重はいつか夏油と結ばれるんですか？ってコメント頂いたんですけど、難しいところです。 (2022年6月19日 22時) (レス) id: 5a85062d9e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とみしろ x他1人 | 作成日時：2022年6月3日 10時
