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おやじさんが『わかってるくせに』という視線を送ってくる。
確かにわかってる。
ずっと前から、織田さんが私をどう思ってるのかわかっていた。
でも、それを見て見ぬ振りをして、戸惑って、あの3人に相談した。
答えなんてとっくにわかってる。
けど、私は臆病だから、それが事実だとしても、言葉を伝えた先どうなるかが怖くて言えなかった。
織田さんは、私をじっと見つめて言った。
「俺も、Aと同じ気持ちだ」
顔が赤くなる気がした。
頬が熱い。熱が出た時みたいだ。
「俺はお前といて楽しいし、いなくてもどうしているか考えてしまう。どうもこれが好きという感情らしい」
織田さんに『他意』というものは存在しない。
つまり、今言ったことは全て本心ということだ。
「俺は、Aが好きだ」
「あ〜もう……」
真っ直ぐすぎる言葉に、私はその場に座り込んだ。
「大丈夫か?」
「大丈夫じゃないです」
あんな恥ずかしいことを、恥ずかしげもなく堂々と本人の顔を見て言えるなんて、織田さんはどうかしている。
「織田さんのばか……」
「?」
「織田作ちゃん、岡ちゃん。とりあえず、座ってカレー食べな」
今の会話の間に用意していたのか、カウンター席に2人分のカレーを置くおやじさん。
私が立ち上がるのを手伝い、カレーの置いてある席まで支えてくれた織田さん。
いつもなら飛びつくのだが、今はそれよりも先程の余韻が勝っている。
「……なんだ?」
何事もなかったようにカレーを頬張る織田さん。
「いいえ〜」
取り乱しているのが私だけで、なんだかバカバカしくなってきた。
私はスプーンを手に取り、カレーを一口頬張った。
いつも通りの味。
無言で食べる私たちを見ながら、おやじさんが笑って言った。
「おめでとう、2人とも」
こうして、ど天然な織田さんの発言で、私たちは晴れて恋人同士になった。
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作者名:あき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/fallHP/
作成日時:2020年1月29日 20時